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 さっきまで子供たちの頭の上を優雅に力強く飛んでいたハチの動きが、今はちょっとだけ、頼りなく見えます。  ふらふらとして、元気がありません。急に落ちたり、また飛びあがったり。  とにかく、なにかが変なのです。  するとみんなも徐々に異変に気付いて、いままで白い服の女の子へと向けられていた視線は、ハチに集まりました。  ゆらゆらと頼りなく飛んでいるハチは、やがて白い服の女の子へと少しずつ近づいていきました。  子供たちは、息をのんでその光景を見守りました。  意味のわからない呪文に、様子のおかしいハチ。  みんな、なんだか怖くなってきました。  だけどその場を離れる子は一人もいません。みんな身動きひとつせず、ハチから一瞬たりとも視線を外しませんでした。  ハチと白い服の女の子の距離はみるみる縮まって、やがてハチは、太陽の方角をさしている女の子の人差し指にとまりました。  そして女の子の指先にとまったハチは、ゆっくりとその上を歩きはじめます。  ハチは指先から手のひらへと歩き、手のひらから手首、手首から女の子の腕へと進んでいきました。
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