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 やがて右腕の肘を通り越したあたりで、ハチはその動きを止めました。  もちろんみんな、ハチから目を逸らしてはいません。  不気味な静けさの中に、呪文だけが森に響きます。  すると、 「刺した!」男の子が叫びました。  女の子に止まっていたハチが、その鋭い針で彼女の二の腕を刺したのです。 「大丈夫?」 「痛くない?」  みんな、心配そうに白い服の女の子に話しかけます。  だけど女の子は呪文を唱えることをやめません。  そして女の子はニヤっと、笑います。  女の子の笑顔を見て、みんなは一歩あとずさりました。  呪文がつづく中、ハチは針を抜いて、女の子の腕の上を再び歩きだします。  ハチはどう見てもさらに弱っているようでした。  女の子の腕の上をたどたどしく歩き、羽はぴくりとも動かしませんでした。 「もうやめて! なんだか怖い!」  ひとりの子が静寂を破るように言葉を発すると、 「そうだよ! もうやめて」 「刺されても平気なのはわかったから、もうやめてよ」 「そうだ、そうだ!」  みんなが不安げに声をあげます。
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