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でも呪文を唱えるつづける女の子は、左の人差し指を唇に押し当て、静かにするよう身振りで伝えます。
人差し指の下にある彼女の唇は、不敵に歪んでいました。
みんなが静かになると彼女は左手の指を口元から離し、今度はその指で右腕にいるハチをさしました。
素直な子供たちは、さらに顔を近づけて、再びハチを注意深く観察します。
腕の上のハチはすでに歩くのをやめ、その場でただふらふらと揺れていました。
正確には揺れているというより、小刻みに震えている、といったほうがいいかもしれません。
ハチの頭も触覚も脚も胴体も、全部がぷるぷると痙攣するように震えているのです。
すると、勇気のある男の子が人一倍ハチに顔を近づけてその様子を観察し始めました。
男の子は真剣な眼差しでハチを見つめています。
ハチと男の子の顔は、あとちょっとで触れてしまえるくらいの距離でした。
そしてその男の子はひとりごとのように言いました。
「ハチが沸騰してる」
男の子の言葉を不思議に思った子供たちは、ハチを観察する目をさらに細くします。
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