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黒い汁で顔の汚れた男の子は、きょとんとした顔をしています。
誰かが、きゃー、と耳に突き刺さるような大きな声で叫びました。
〇
包丁が川に落ちた。
落ちた音は聞こえてこなかった。
わたしの右手はまだ震えていた。
これですべてを厄介払い出来るはずだ、と思った。
わたしはようやくクリーンになれるはずだ。
川面と衝突し、その後川の底へと沈んでいく包丁。すぐにその姿は見えなくなる。
そしてわたしは気づいた。
ああ、こんなことじゃ何も変わらないんだ、と。
川は青かった。
わたしは、さっき駅で飲んだサイダーを思い出した。
サイダーも青かった。
嘘くさいくらいに。
わたしが子供のころは、世界はすべて青かったのかもしれない、とふと思う。
夏休みのサイダー、友達と行ったプール、初めての恋。
みんなみんな、透き通るような青だった。
空は青くて、わたしの心も青かった。
飛んでいる小鳥も青く、空と鳥のように、わたしもいつだって彼らの青と一体になることが出来るような気がしていた。
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