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* * *
「はっ、え!?シーナ君!」
突然部屋に入ってきたシーナに驚くハロルドと、表情を崩さない半身が蛇の男。
つかつかと近寄り、神と慕う男の腕にしがみつく。
「神様は、っ、俺だけの神様だから、ダメだ!」
キッと、ハロルドに向けた強い眼。
本当に不思議だ…
ハロルドは、蛇の血を飲んだからだろう。
マキが教えてくれた通りヴァンパイアの血食後は眼の色が赤く染まり、さらに髪の毛は老人のように真っ白になっていた。
「え!?あぁ、さっきの言葉が気に障った?なら取り消すよ」
「………」
「それに、そこで立ち聞きしてたなら分かったよね?君の大好きな神様が、人間のために飢えるのは可哀想じゃない?」
俺は魔族について、何も知らない。
たいした魔力もないし、神様に守ってもらえなかったらこの森で生きていくことも出来ない。
でも、他の人間がこの男を神様と慕うのは許せなかった。
それにーーー
「…っ、俺がちょっと文句言ったくらいで取り消すなら、最初っから言わないでくださいっ!神様も、俺のために我慢しないで!」
オルガは言った。
【ご主人様は、シーナが大切。シーナのため考える】
ちょっとでもシーナが怪我して帰れば、何のための護衛だ?とマキとオルガが叱られる。
人間が寒くないかと気を遣い、貴重な魔具を使ってくれた。
今日だってハロルドに怯え、咄嗟に「神様」と叫べば駆けつけてくれた。
(神様にとって俺は、嫁なんてたいそうな存在じゃない)
自分がほっとけば死んでしまうような、弱さ故に目が離せない愛玩動物だ。
だから、弱い俺なんて人間を引き合いに出されたら、神様は動けなくなってしまう。
俺だって神様のためだと言われれば、ちょっとくらい痛いのも苦しいのも我慢できるのに…!
「いつか、俺が出て行く日が来ても、それは二人で決めるので!ハロルドさんは、心配しないでくださいっ」
あと、距離が近いんだよ。二人とも!
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