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(寒い…、おなか…苦しい…)
孵化するには三日いると告られた。
逃げることもできず、ただ冷たい地面でシーナは蹲っていた。
「ほら、人間。食べ物だ」
魔族の男はずっとここにいるわけではない。が、こうして数時間おきにわざわざ面倒をみにくる。
「……何だ、やはり怖いのか」
裸に剥かれて凍えるシーナを見ても、恐怖心で震えているのだろうと思っていた。
「・、りがと…ござい、ます…」
「ふん。孵化前に死なれたら困るからな」
この魔族には洞窟の寒さなどたいしたものではない。むしろ涼しくて心地よい。
少しは怯えているであろう様子を楽しみにしていたのに予想していた反応はない。
少年は前に出された水気の多そうな果実を一口齧って、また体を丸くした。
「………なんだ。もういらないのか?」
「ごめん…、なさい…」
果実はとても美味しくて喉も潤った。
男は孵化するまで母体であるシーナを傷つけない…ならば、もう自分にできるのは寒さで体を壊さないことだけだ。
凍える体。
少しでも暖めるように腹を守るよう抱き抱えれば、男は何故か舌打ちをした。
魔族の男の用件はそれだけだったらしい。
すぐシーナの前から立ち去ろうとした。
「…かみさ、ま…ごめんなさい…」
「あ?」
「…に…、…も、少し…いてくれませんか」
コレはいちいち不思議なことを言う。
魔族を絆すなど人間に、こんな子供に出来るはずがない。
「……まぁ、暇だからいいだろう」
ドカッと隣に座られただけなのに、少し場が暖かくなった気がした。
礼を言うと、やっぱり男はふん。とそっぽ向いてしまった。
苦しそうな顔を見せても、受け答えはしっかりするし舌を噛んで死ぬつもりもないらしい。
大人しく胎内の中から喰われる運命を受け入れているのだろう…。
(面白くない…)
一言、助けてくださいと根を上げれば…
そう思った瞬間、疑問が浮かぶ。
コレがそう願ったところで、どうするのか?と。
また情けをかけてみるのか
それとも却下し、絶望に歪む顔見るのか…
そんな様子を眷属の蛇達はため息を吐きながら見守っていた。
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