触れる

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「ーーと、いうことがあってな……、おい。聞いているのか?」 少し前から反応がないので隣を見ると、すやすやと布団の中で眠っている少年。 せっかく話をしてやっているのに…と起こそうとすればどこで見ていたのか一匹の眷属に諌められた。 『こんなに青褪めて可哀想です。…なにもこんな痩せ細った人間を苗床にしなくても良かったのでは…?』 その小言はふんと鼻を鳴らす。 「選んだのは、私ではない。コレの方だ」 魔族だからと手当たり次第人間を襲うわけでも糧とするわけではない。 そんなことをすれば人間は絶滅してしまうし、食物連鎖が崩壊してしまう。 とはいっても、人間も魔獣や魔族らに簡単に喰われない為、日々鍛錬や魔術を鍛えているわけだが…。 『まぁ苗床と言っても、私どもには指一本触れさせませんでしたけどね』 「……なにが言いたい?」 眷属にも様々な個性や特性といった固体差があるが、ここまで主に口を挟んでくるのは珍しい。 何十年ぶりだ?もしかすると、コイツは近い将来魔族化するのかもしれない。 魔族は雌雄が番いになったところで出生率が低く、生まれてもうまく子育てができない場合が多い。 確率は低く時間はかかるが眷属を持ち、彼らが魔族として変異するのを待つか、人間の腹に種を植え付ける。 しかし人間が孕み産んだところで、だいたいは変異前の姿で生まれる。 人間でも魔族でもない。その醜体を見た母体は発狂死するか……生きていたところでロクな目には遭わない。 しかし魔族とて生物である以上、本能がある。 自らの種が絶滅するのは許されないのだ。 『ご主人様、人間の子供は…食べませんからね』 「子供は火種になりかねん」 生きているだけマシだろう。 土地、女、子供を巡り争いになった国を繰り返し見てきた。 ゴブリンやスライムですら、もう少し頭を使えるのに人間とは短気なのか相手を滅ぼすまで納得しない生き物らしい。 「……お前は、コレをどう思う?」 『特に問題ないように思えましたが…』 シューシューと旨そうに少年を見つめる蛇に溜息を漏らす。 丁寧な話し方や振る舞いをして見せても、眷属とは欲に忠実な生き物だ。 見た目はまずそうだが、鳥のように鳴き、ボロボロと頬から流す涙は、男の加虐心を煽るに煽った。 人間の体液は甘美で何度も身体にしゃぶりついた。 それを眺めていた蛇達は、餌としてシーナに興味深々のようだ。 「子供は成長すれば立派な母体となる。まだやらんぞ」 『これは、雄ですが?』 ついでに成人してますね。の一声。 「………」 男はその眷属を掴むと、ぶんと外へと放り投げた。
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