真実

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鏡から聞こえるのは醜悪な人間の欲望。 そして騙され、いまからのたうち回る死を迎える少年。 「ふ…、ふふ…はははは!」 そのあまりにも滑稽な様子に魔族の男は、腹を抱え大声で笑い出した。 「人間とは本当に愚かだなぁ?私利私欲のためならば、簡単に、肉親を犠牲にできる!」 「……っ、…」 ボロボロとしゃくりを上げる事なく静かに涙を流す少年。 家族という概念は魔族の男にはないが、同族達に打ち拉がれたと思えばその心情も分からなくもない。 「姉を憎め、村を憎め。その憎悪で腹のものはー…」 激しく恨んだ結果、孵化した彼らは自分の代わりに村を襲うおぞましい化け物になるというのだろうか? 嬉々として神は笑う。 「恨むのも当然であり、本能だろう?」 村人たちが冷たかったのは、なるべくシーナと関わらないようにしたのだろう。 役割を果たせず死んだ時、自分達の心がなるべく痛まないよう。 医師はシーナが泉に行く決意を鈍らせないために、わざと家に泊めて施しをした。 生まれた時か、それとも加護を知られてからかは分からないが、花を摘むための道具として扱われていた…。 「ち、が、…」 その言葉に、違う…と、弱々しくも反論をした。 「大好き、だったんです。本当に…いまも…大好きで…で、も…無事だったなら…」 心の中はズタボロだ。 実際涙も溢れている。 傷ついたし怒っている 悲しい、憎い、つらい… だけど死ぬ瞬間まで生まれた事を呪いたくなかった。 たった一人の肉親を恨んで死ぬのは、なによりつらい。 だからこそ、視点を変えたのだ。 「か、みさま、ありがとう…ございます」 姉さんの顔をじっと見ればわかる。 目が笑っていないし、 誰も気づいちゃいないが、…時々下唇を噛んでいる。 気丈に振る舞うことでしか、彼女には感情のやり場がないのだと分かっていた。 大変な役割を弟が担う事になった。 けど村人全員の生活が彼の肩に乗っている… 村から逃げられる保証はないし、 二人とも捕まれば、もっと酷いことをされる。 きっと……心を引き裂かれる思いで、無理やり納得したんだろう。 そしてこの場で、姉さんは大事なことを言っていない。 そうだ。 姉だけは変わらず、優しかった…。 「大丈夫…。きっとまた、笑える…」 先に逝って待っているから。
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