真実

4/4
前へ
/48ページ
次へ
「…、…おい!?」 慌ただしく耳元で聞こえる男の声。 けれど答えるのは苦しそうに吐く息のみ。 この異常事態くらい魔族の男にも分かった。 原因は、少年の中にあるモノではない。 『主人様!落ち着いて…』 「何故だ…?あれは多少苦しさはあれど"無害"だぞ!?」 思わず眷属に噛み付いてしまった。それほどに男は混乱していた。 理由はわからないが、少年が瀕死なのは間違いない。 もし他にあるとするならばーーー、 「…、まさか…!?」 男が布団を剥ぎ取った瞬間、少年を本当に蝕んでいたものの正体が分かった。 シーナの首から下には、男の拳ほどある青黒い斑点がポツポツと現れている。 「貴様、毒を飲んだな!?」 「…、っ…」 (あぁ、知られてしまった…) シーナが村に帰って探したのは毒草。 飲めば2・3日かけて、ゆっくりと死に至らしめる。 解毒薬は村にもあるが、ここまで毒素が全身に回ってしまえば手遅れだ。 どうせ苦しみもがいて死ぬのならば、自分から少しでも楽に死ねる道を選んだ。 思ったより苦しくなかったのは、加護とかいうおかげだろうか。 神様は俺が精神的ショックを受け、食事もあまり摂らないから気と体力が落ちていたと勘違いしてくれたらしい おかげで、さっきまでバレずに済んだ…のに、 どうして…     そんな悲しそうな顔を、するのだろう? 手を持ち上げる力も、残されていない. すでに視界も霞んでいる. なのに、そう見えてしまった. 「ー、ー…、」 「、なんだ?」 『許してください』 花をくれた優しい神様を騙してしまった. 俺にたくさん話しかけてくれたのは、姉さん以外貴方がはじめてだった 楽しいとは違うけれど、怖くはなかった。 きっと貴方は未練が残らないよう姉の様子を見せてくれただろうに… どうか、このまま……眠らせて。 他にも言いたいことはたくさんあったけれど 今度こそ深い眠りへと落ちていった。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加