魔族視点(5/28修正済)

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「ーーーおい!?」 分かっていた。 人間を飼うときは、その動向に注意する必要があると。 従順そうに見えてもいつ裏切るとも分からない。 魔族よりも力はないくせに見栄を張り、魔術や武芸に頼ることでしか身を守れぬ愚かな生き物たち。 「なぜ、だ…!?」 抱き上げた細い体。 『死んだ?』 『弱い、可哀想可哀想』 そんな眷属たちの言葉も遠い。 人間はいま…私の腕の中。 村人共の思惑を知っても、恨みごと一つ言わず静かに生命活動を終えようとしていた。 苗床になろうとしていたのだから、どんな運命でも容易く受け入れるものだと思っていた…。 人間を抱きしめ、『何故』と問うばかりだ。 「……から、…」 微かにも口が動いた。 『許してください』 その疑問を打ち払ってくれるかのように、人間は弱い息を吐きながらも笑っていた。 …、俺には分からない。 なぜ、こんな状況で「優しくしてもらえた」。そんなことを言えるのかっ。 「待て!」 死ぬならせめて魅力を解いてから死ね! ここまで不安定な感情ははじめてだった そう強く揺さぶったところで、もう反応はない。 体はどんどん冷たくなっていく。 まさか、死を許せと言うのだろうか? ふざけるな…! そんなこと、あってたまる物か。 「……花を、持ってこい」 奪うな、触るな、見るな!! 「冥府の神であろうが、他の誰にくれてやるか!」 ぐっと、人間の後頭部を支える腕に力が入る。 コレが、シーナが崇拝する神はただひとり、俺だけでいい。
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