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無事に目を覚ました少年は酷く狼狽えていたが、体を蝕んでいた毒も腹に入れられていた核も取り除かれたと気づけばすぐ大人しくなった。
…が、眷属との会話がよほどショックだったのか気を失う始末。
三日もロクに食わなかったのだ。
あんな痩せた体で何日もの空腹に耐えられるものか
体の不要物は核が吸収する。
そこから宿主に必要な加護を選別し付与するが、栄養までは与えない。
このような加護の与え方は卵胎生である蛇種特有のものであり他の魔族のやり方は割愛する。
再び目が覚めた後、ゆっくり食事を交えながら対話をするも魔族と人間故に話が噛み合わない。
「け、けけけっ結婚!?俺と神様がですか!?」
冒頭から説明していくうちにようやく理解したらしい。人間は酷く驚いていた。
「他の誰がいる?それに人間とは空気を読む生き物なのだろう?どんな精霊と契約してそうなる?」
「に、人間にそんな力はありませんっ!」
眷属達からの助力のおかげで誤解を解くことができたが、こちらの好意は一切伝わっていなかった。
驚愕する主人をよそに眷属達は「だから言ったのに」と、こぞってため息を漏らしていた。
「だ、だって…嫌われることはあっても、好き…好きになってもらえたなんて…それも神様に…」
「何を言う。最初に私を魅了してきたのはお前だろう?まぁいい。…私を受け入れる気がないなら、さっさとその魔術を解け」
「!?」
つーんとそっぽを向く男。
しかし魅了など心当たりもないことを言われて混乱するシーナ。
事情を汲み取り動いたのは一匹の眷属だった。
『どうやら無自覚に発動してしまったようですね。ご主人様、どうです?人間はここに置いて自然に解けるのを待っては?』
「………別に置いておく必要もないだろ」
『いえいえ。ご主人様が、人間の…それも魅了が効くほどに弱体化しているなど外に漏らされては私どもが困ります』
シーナが咄嗟に口を開こうとした途端、パチッとその蛇は片目を閉じた。悪意のなさそうな蛇の様子におとなしく口を噤んだ。
「…お前は、帰る気はないのか?」
「お、俺は……」
『今戻れば、またあの毒の泉に入れられますよ』
「ーゃ、っ」
その言葉に恐怖が蘇ったのか青ざめ悲鳴を上げた。
村の醜態を見てしまった後だ。
いま戻れば、またどんな目に遭わされるか…。
ぎゅっと堪えるように拳を握り、ふるふると小さく震える様子は見ているだけで庇護欲を誘う。
(くそっ…好意がないと分かっていてもっ)
「……分かった分かった!解けるまで好きにいればいい。またすぐ死なれては花が勿体無いからな」
「神様…!」
目を爛々と輝かせながら礼を言われると、心の奥がむずむずと痒くなる。
その後、少年は洞窟に居候することとなり
魔族の男の話し相手となった。
そして、現在…
男はとある魔族の元を訪ねていた。
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