92人が本棚に入れています
本棚に追加
「コイ…?」
「言っておくが、魚のことじゃないからな。定番ネタかますなよ?」
「…?」
そうは言われても、よく分からない。
少なくとも……魅了状態ではなかったらしい。
「第一、お前に人間のデバ…弱体魔術が効くかよ。あー真面目に聞いて超疲れた。惚気なら他でやって」
「そう…か…。これが……」
まだ信じられないという顔をしているが、多少なりと腑に落ちたらしい。
「お前は本ばっか読んで、眷属以外の…表情筋が動く生き物と関わらなかったからなぁ?どうだ、少しは人間好きの気持ちが分かったか?」
人は魔族ほど生きられない。
それでも考え、生きようとする姿は見ていて飽きない。
魔族にない価値観を持ち、友を愛するのだ。
ここに住む数名のヴァンパイア達もそれを良しとしハーレムを作り、"家族"を守るために尽力している。
まさに理想郷だとハロルドは想う。
「まぁ…どうしても目障りってんなら俺が引き取ってもいいよ」
「――、」
その時、ぴくっと男の表情筋が動いた。
「帰る」
「あ?」
「シーナが転んだと連絡が入った」
若干怒りを含んだ形相で、帰り支度を始める友人。
(うえぇー…めっちゃ大事にしてるやーん)
なんだ、余計な心配することはなさそうだ。
安心した。
「ハロルド」
「ん-?」
「悪くない…・ものだな」
そう言い残して一方的に、男はその場からふっと消えて行った。
そして誰もいなくなった応接間でハロルドは一人、
敬礼をした。
(魔族視点 END)
ハロルドは日本からの転生者
人間から魔族に生まれ変わっちゃったけど、人間も魔族も幸せな生き方ができるように奔走中。
鑑定(S)により、ありとあらゆるステータスを確認できる。腐男子。
最初のコメントを投稿しよう!