少年

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  それは、まさに拷問だった。 (痛い痛い痛い痛いっ!!!) 焼けるような刺す痛みが再び少年を蝕む。 その激痛に耐えれるよう、負けじと貧しい生活で自分を養うために身体まで売っていた姉の献身と笑顔を思い浮かべる。 (クソッ!こんなことをしないといけないのか) 思わず口汚くなるのも仕方がない でも取り戻したいんだ。 『今日はシーナの誕生日だよ』 そんな苦しくも、楽しかった日々を。 (うぅ、つ"、っ…!) 頭の中はひたすら引き返せと警鐘を鳴らす。 此処で意識を失い倒れでもすればショック死してしまうだろう。 (こんなに我慢してまで姉を救いたいのか) 無理だ 自分には耐えられない。 『ほら泣かないで前を向いて? 男の子なんだから、ね? 笑って。 シーナの笑顔が、一番。』 ーーーーでも、此処までこれた。 「っれ、も…、だい".すぎ、だ、…ょ…」 今また水から逃げてしまえばもう二度と入らなくなってしまう。心が折れて、医師の元へ逃げ帰る。 それを分かっていて、姉のことだけを考えて懸命に前へと足を動かす。 涙も汗も鼻も垂れ流し状態の酷い面でも、 いまだけは…姉は応援してくれてるはずだ。 「ーーーっ、、」 気がつくと少年は岩肌の前にいた。 しかしその安堵も束の間. ふらふらと近付き目にした光景に、息を呑む。 蛇だ…。 ぞわぞわと無数の黒い蛇達が一つの塊となって蠢きあっている。これが岩肌の正体であった。 「ひっ…!?」 考えるよりも先にビクッと体がのけぞった。 この水の痛みは…この蛇たちの毒素なのだろう そして、その蛇達の間から赤い花達が顔を出している。 根っこの部分など見えない。 あまりの光景に痛みすら忘れてしまった。 「っ、ざけんなっ…、!」 もう引き返すことはできない 考えるよりも先に、ましてや気が狂う前に少年は腕を前にーー… そして力任せに、ぐいっと何本かの花を引き抜いた。 「ーーーーあっ!」 途端、蛇達が雪崩のように少年へ襲いかかってきた (しまっー.!!) 体勢を失った体は水面へと落ちていくーー… そして、シーナは意識を手放した。
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