惚れたものが負け

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旧知の仲とはいえ人間を糧にする魔族。 他種族の、しかも闘争本能が高い雄が無断で縄張りに踏み入ろうものなら問答無用で血みどろの争いが始まる。 そうならなかったのはこのツンデレ魔族が、少なからずハロルドを外敵とは思っていなかったからだ。 シーナを守るべく半人半蛇が放った魔術は、ハロルドの腹部ではなく頭部を狙っていたが加減はされていた。 ヴァンパイアと群れることがないナーガが友人関係だなんて、誰がみても驚くだろう。 「本は受け取った。さっさと帰れ」 「えぇー!?お前んちに泊めてくれないの!?」 「コレを追い回し、私の縄張りを乱したからな」 「彼を怖がらせたことは反省した!絶対なにもしないから、ちょっと休ませてくれてもよくね!?」 ダメだ。俺の嘆きを無視して早速本を読んでやがる… コイツだってヴァンパイアの村に何度も来ているが、もちろん住人達に手を出したことはないし、俺が許さない。 まさか、この男が同じ気持ちだったなんて… (さぁて、真面目に困ったぞ) 滞在は許してくれそうにない。 こんな長距離移動は久々のことで、俺は準備を怠ってしまった。 村に帰るまで、ちゃんと持つだろうか…   「あ、あの…神様!」 せっかく遠路遥々きたのだ。休ませてあげてほしい。 他ならぬシーナが説得すれば、「好きにしろ」とナーガの男は渋々ながらも簡単に折れたので、空いた口が塞がらなかった。
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