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「……なに、これ」
洞窟の中は魔具を使った温度調節により寒くはない。ちゃんと、人間にとっての適温が維持されている。さらに壁も岩が剥き出しにならないよう壁紙と木材で覆われていた。
ナーガの巣穴だというのに、すっかりシーナという人間仕様にされていることに驚く。
いや。
巣穴というより、家だ。
「お前の住処を真似てみたが、細部までは分からん。欠陥があるなら言え」
「欠陥はないけど驚くよね!?なに!?君、あんなにドライだったのに急に激甘じゃん!?」
そりゃ手を出そうとしたハロルドが殺されそうになったのも分かる。
(でも飼うって言ってたじゃん!溺愛まで聞いてない!)
シーナはどうみても人間の子供だ。
それも珍しく人畜無害で、素直そうな
彼らの馴れ初めが知りたいと、思ってしまった。
「ねぇ、シーナ君。本当はアイツが魔族って分かってるよね?なんで神様って呼ぶんだ?」
「……それは、」
あの姿を見れば、誰もがそう思うはずだ。
初めて出会った瞬間、シーナは息を呑んだ。
あぁ なんて綺麗なんだ…と。
異形の姿をしていると分かっていても、その佇まいは堂々としていて美しい。
目を向けられると、その瞳に吸い込まれそうになる。
大人から聞いていた恐ろしい魔族とはほど遠い
優しく慈悲のある存在。
神様と、呼ぶのが相応しいと思った。
なんて語ろうとして、カァっと顔が熱くなった。
「ぜんぶ言わないと、だめ…ですか?」
「はう!?」
恥じらう笑み。その照れた上目遣いに陥落した。
この世界はクソゲーだ。
魔獣、魔族、人間の三つの勢力。
魔獣は数が多くて繁殖力も高い。自我を持たず襲ってくるから、魔族と人間共通の天敵。
魔族は自我のあるモンスターってとこ。
高等魔術も操れるし人語も話せるが、繁殖率の低さから数は少ない。自尊心の高いヤツが多く基本群れない、ぼっち。
んで、人間が最弱か?と聞かれれば、NOだ。
生まれ持ったスキルや加護を活かして戦う。
魔獣どもに抗う力がなければ、土地は痩せ細り全滅だ。
男も女も、時には死を恐れない戦闘狂なんてのも現れ、彼らはいつしか英雄と呼ばれる。
屈強な肉体を持つ戦士系が多く、魔術師は希少。
そう、彼らはゴリラだ。
人間なのにゴリラみが強すぎて萌えない!!
(なに超いい子。素直、擦れてない、かわいい!黒目黒髪なとこも俺は馴染みがあって愛おしい!)
当て馬でいい。
正直、一目惚れした。
シーナを村に連れて帰ってハーレムの一員に加えたい。
こんな洞窟じゃなくて、ちゃんと人間たちと交流もできる。村には小さいが教育機関もあるし、希望するなら就職の支援もする。
なにより俺の庇護がある。
陽の光の下で、人間らしい生活を不自由なく送れるのだ、悪い話じゃあないはずだ。
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