Birth-Day

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 中学生の娘が俺を避け始めた。年頃になれば出てくる「お父さんキモイ」というやつだ。職場の先輩から聞かされていた、よくある話。自分の番となると正直にいって凹む。  妻に「洗濯は別にして」と頼んでいるのを聞いたのが始まりだった。俺は太っちゃいないし臭くもない。身綺麗でいることを心掛けている。  それでいて避けられるのは辛い。  会社の先輩は娘に意味もなく嫌われることについて「終わるのを待つしかない」と言っていたが、俺はどうにか自分の力で終わらせたい。  仕事帰りに閉店間際のケーキ店に立ち寄った。きょうは娘の誕生日だ。友だちと遊ぶことに夢中で帰ってきていないかもしれないが、とにかく買う。何もないよりは良いだろうし、一日遅れでも食べられないことはない。ケーキ箱を助手席に置いて、崩れないかと心配しながら運転する。  帰宅すると玄関には妻と娘の靴があった。二人ともキッチンにいるようで話し声が聞こえた。内容までは分からないが、妻が娘を冷静にではあるが叱っている。  これでは中に入り辛いが、ケーキは早く冷蔵庫に入れるか食べたほうがいい。元より甘い物で機嫌を取ろうとしていたのだから、と開き直ってキッチンのドアを開けた。  
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