花開く

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私の生きてきた16年間で花が開いた瞬間なんて存在しない。 水を与えても、いい土に変えても私の心の中にある種は花を咲かせてはくれなかった。 小学生の時に、父親が電車内で痴漢を行い逮捕されたことを新聞やニュースで取り上げられたことにより、母は鬱状態に 学校では「変態父親の息子」と呼ばれ、窃盗や陰口によるいじめが絶えなかった。 担当していた先生は見て見ぬ振りをしないで 「嫌なことがあったら先生にいいなさい。」 そう教えてくれた。 先生はいじめている生徒に対してちゃんと注意しては私を守ってくれた。 まるでプリンスを守るナイトのようであった。 先生のおかげでいじめられる日は減って徐々に普通の学校生活を送れることができた。 私の心の中の種も徐々に成長して花が開いてきたかのように思えたが、 事件は起きた。 先生は人を殺してしまった。 飲酒運転で人を轢いてしまったのだ。 お酒は缶2缶程度でベロンベロンに酔っていなかったが、油断して信号無視により人を轢いてしまった。 当然、学校側は先生を処分、朝のニュースで大きく取り上げられた。 小学校の名前は全国に知らされてしまい、苦情の電話が鳴りやまなかった。 先生たちも耐えるのに必死だった。 生徒たちもその先生の顔を見ているたびに心配をしていた。 世間のざわつきが収まり、普段の学校生活を送れる気がしていたのだが、 いじめが再度行われてしまった。 けれど、朗報はあった、母親の鬱状態が治ったのである。 母親は働こうと必死に資格の勉強を始めて頑張っているからいじめの件は母親に相談しないよう黙っていた。 そのまま私は小学校を卒業するまで耐えたのだ。 中学一年生の二学期、母親の仕事の都合で遠い地域まで引っ越しすることになった。 私にはとても都合が良かった、小学校でいじめをしていた連中が中学校に入っても頻繁に窃盗や罵倒する暴言を吐かれたりされた。 しかも残念なことに先生の見ていないところで実行しているところが非常に憎たらしかった。 そんなゴミ共ともう一緒に学校生活を送らなくてもいいんだ。 こんな辛い毎日におさらばできるんだ。 ようやく地獄から解放されるんだ。 車で引っ越し先へ向かっている最中に溜まっていた憎しみと悲しみが一気に溢れ出し 私は涙を流した。 「ごめんね、急に引っ越しなんて決めてもっと友達と過ごしたかったよね、」 運転中の母親が謝る。 「違うの、お母さんが仕事決まって運転して、昔の楽しい日常に戻った感じがして 嬉しい。お母さんも鬱状態が回復して明るくなったしそれで涙が、、」 違う理由を話した。 すると母親も自然と涙が出て涙で視界がぼやけ対向車の車のミラー同士がぶつかりそうになった。 「ちょっと、泣かせないでよ、、グスン」 私は大笑いした。それに連なって母親もにこりと軽く笑みを見せた。 お母さん、噓言ってごめんね、だけどお母さんが元に戻って本当に嬉しいのは事実なんだよ。 難しい試練を克服した母親と新たなチャンスを目指す少女が乗った車はまっすぐ目的地まで走っていった。 ようやく私の心の種に水を与えることができた。 しかし、花は咲かなかった。 新しい学校に転校し、自己紹介を終えた後に隣の女の子から話しかけられすぐ友達ができた。その後も二人友達ができて、一緒にご飯を食べたり、お話をしたり楽しい生活を送れるようになった。 数日が経った頃、友達に一人に彼氏ができた。学校内ではかなり女子から人気のある超イケメン君であった。 最初は「おめでとー!」、「お幸せに!」と祝福の声を上げて接していたが。 次第に、彼氏持ちの超絶幸せの女はどうでもいい自慢話や私たちの時間よりも彼氏の時間を優先するようになった。 私は別に仕方ないと思った、学校内の超絶美男と付き合っているならその子を独占したいという気持ちは分からないものでもない。 が、嫉妬心の強い友達は許さなかった。 距離を取るように無視をしたり、陰口を言ったり、いじめに匹敵するも行為を行うようになった。 私たち四人の友情関係はこんなに薄いものなのか、こんな簡単に崩れるものなのか。 私は友情とは肩書きの存在であることを実感して絶望した。 そして、二人から避けるようになって私は一人になった。 ようやく求めていた夢の中学校生活が幕を閉じた。 しかし、不登校で母親に迷惑をかけたくなかったので、学校は行った。 そして勉強も頑張った。テストの順位では上位をキープしていたし、先生にだって偏差値の高い高校を勧められた。頭の悪いギャルの女の子に勉強を教えてと頼まれたりすることもあった、その子から「教えるの上手だね」と言われて少し嬉しくなった。 そんぐらいしかいいことはなく、卒業式を終えてしまった。 そして、今に至る。 今日から女子高校生。近くの偏差値の高い高校に合格することができた。 今度こそは充実した学校生活を送るんだ。午前では体育館にて入学式を行う。 少しブカブカな制服を身に着け、母親から化粧のやり方を教えてもらって出発した。 自宅から自転車で20分の場所にある、マンモス校ともいわれるくらい大きな高校である。 偏差値が高い、部活動も盛ん、設備が整っている。 この条件が満たされていてかなり人気がある。倍率も2.3倍とかなり高かった。 そんな難解の門を突破して聞く校長の話は 、、やっぱ眠くなる。。 入学式が終わり、母親は仕事の関係によりここで解散、午後からはまた体育館にて部活動紹介が行われる。 昼休みでは、今日限り学食も無料で一品食べることができると聞いた新入生の生徒たちは 一目散に学食へ駆けつけ長い列が生まれてしまった。 「コンビニ行くか。」 軽い軽食を買って、学食は部活動紹介が終わってからにしよう。 午後の部門、部活動紹介が始まった。 野球部、サッカー部、相撲部、漫才部など様々な部活動が存在する。 さすがマンモス校。 時間はあっという間に過ぎて最後の部活動の番になった。 「今のところ、やりたい部活動はないかな。」 「最後の紹介はまだ正式な部活ではないのですが軽音部です! 人数は4人で参加者募集中です!それではお願いします!」 アナウンスの紹介が終わったあと、魔法少女のコスプレをした軽音部の四人が登場した。 体育館内はざわざわしていた。 私は戸惑いよりも失望に近かった。そういうコスプレして歌う遊び半分の部活動なんだと もう部活動には入らない。 そう決めた瞬間に ギュイーンーー! 激しいギターの音が鳴り響き、体育館内は静まり返った。 「軽音楽部です、歌います。タイトルは花開く。」 ボーカルがクールに自己紹介を済んで歌い始めた。 しかも、パンクロック。服装とのギャップに私は燃えた。 この部活面白いかも。今まで経験したことのない驚きでなんだか涙が出てきそうになった。 歌が終わった、体育館内は拍手の山で埋め尽くされた。 この部活動に入ろう。 私が軽音楽部に入り、「花開く」を歌うことになるのはまた先のお話である。
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