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「……私は、そうでもない、かなぁ」
気付けば、私はそう答えていた。
(あれ、今、私、何を……)
思えば、それは初めて私が美姫の意見にノーを突きつけた瞬間だった。
私の答えを聞いた同級生達はひどく驚いた顔をしていたけれど、それ以上に驚いた顔をしていたのは美姫だった。
白い頬をリンゴのように真っ赤にして美姫は言った。
「なにそれ、私の意見に反対するってこと?」
「反対って、べつに、私、そういうわけじゃ」
「じゃあ、どういうつもりなの?」
「私はただ、私が思ってことを言っただけで」
美姫の頬を染めている赤が怒りだと気づいた私はどうにか美姫の怒りを沈めようと必死だったけれど、美姫の怒りがおさまることはなかった。
「信じられない! もういい! 行こう!」
美姫は怒り任せに広げていたお弁当を片付けて立ち上がると、隣に座っていた同級生達に声をかけて行ってしまった。
私だけを残して……。
教室は事の次第を見届けるようにいつの間にか静まり返っていたが、やがて何事もなかったかのようににぎやかさを取り戻していた。
(どうしよう……)
私はひどく後悔するが、もう何もかも遅かった。
そう気づいたのが昼からの授業でのことだった。
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