ETC編

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「この車にはETCがついている。だから、僕はこのまま行かせてもらうよ」 「いや、ここは一般レーンですので、現金でお支払いください。ETCをお使いでしたら、ETC専用レーンに入っていただかないと…」 「君、ここのレーンは何のレーンだい?もう一度教えてくれないか」 「いや、だから一般レーンです」 「そう。一般レーンだ。僕はね『一般とは世の中の大多数がそうである』という意味で捉えているんだ。今、ETCの搭載率がどれくらいか、君、知っているかい?」 山本はいぞうが料金所の人に何を言いたいのかわかり、やっぱり自分が運転するべきだと思ったが今さらどうしようもない。山本は1000円を出し料金所の人へ渡そうとした。しかし、いぞうがそれを遮った。 「山本、世直しの邪魔をしないでくれ。さあ、君、ETCの搭載率はどれくらいだい?」 「いや、あの、1000円になります」 料金所の人は困惑しながら言った。 「わからないなら、僕が教えてあげよう。91%だよ。今はもう、9割以上の車にETCが搭載されているんだ。ということはだ、今はETCを搭載しているという方が一般的ということになる。違うかい?」 「あの、1000円…」 「つまり、この一般レーンこそ、ETC搭載車を通すべきなんだよ。僕は君を困らせたいわけじゃないが、どう考えても僕が間違えたことを言っているとは思えないんだ」 「1000円…」 「確かに、ETCが世に出始めたころはETC搭載車は圧倒的に少なかった。だから、一般レーンとETC専用レーンで区別したのはわかる。だが時代は変わり、今やETC搭載車の方が一般的になった。それにも関わらず、レーンの区分けはそのままだ。時代の変化に対して見て見ぬふりをし、君たちは対応を怠ったんだ。これを怠慢といわずしてなんと言うだろうか。君、僕は間違っているかい?」 料金所の人が泣きそうになっているを見て、山本は黙ってられなくなった。
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