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知紗は思わず、固まってしまった。初対面の勝春にそこまで言われてしまうことに何も考えられなくなってしまったのである。
「人は見た目を選ぶ。しかし感情は選ぶことが出来ないのです。接して初めて分かることですから。そして感情を受け止めることが出来て、初めて手を取り合うことが出来る──。それは家族でも同様です」
勝春は次々に知紗に投げ掛けるも、手をそっと添えた。
「貴女を見ていると、本当に家族からも何も得ることはなかったのだと思ってしまいます。人はひとりでは何も出来ないと言うのに……それを理解出来ない家族も実に滑稽です」
的を得た勝春の言葉に、知紗は同情せざるを得なかった。例えそれが間違っているとしても、同じ気持ちで寄り添ってくれる勝春はまさに救いの仏のようだった。
「私は貴女の生きた時を知りません。それ故好き勝手に事をお話ししていること、どうかお許しください。私が話したことに答えはないかもしれませんが……答えを見つけてしまうと、私は歩みを止めてしまうかもしれません」
「それはいったい……?」
「答えがないからこそ、人は足掻くでしょう?答えを見つけてしまえば、全てが終わってしまう。ならば、まだ足掻いている方が『幸』を求め続けることが出来るかもしれません」
勝春は添えていた手をギュッと握り、強い視線で知紗に語る。
「『幸』は巡って来るものかもしれませんが、どうかその様を忘れないで下さい。そして今後も家族が貴女の満たされないものならば、いずれ捨てねばならないことになるでしょうね」
「!?」
「もし、その時があるならば……いくらでも私が迎えに参ります」
「な、何を……!」
そう詰め寄った瞬間
「知紗様?」
若い男性の声が知紗の名を呼んだ。
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