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私は彼の熱い指先を思い出して、自らの蕾にそろそろと手を伸ばした。
右手は服の中に入り、桃色の突起物を探し出す。
いつもされているみたいに、指先を動かして中をかき乱すけれど、どうにもこうにも鏡夜とは指の長さが違うのだと知る。
「ぅん、」
届かないもどかしさに、悩ましげな声が漏れる。
次第に大きくなっていく快楽の中、私は鏡夜の幻を見た。
彼はやっぱり意地悪な顔をして、意地悪な声で、意地悪なことを言う。
あの熱い指先が忘れられない。
あの鋭い眼差しが私の中の熱を昂らせる。
「……っきょ、やぁ」
抱かれている時には決して呼ばない彼の名を呼び、決して出さないあえかな声を出して。
私は一人、上り詰めた。
その瞬間、ぽろりと涙が零れたことには気付かないふりをして。
汗ばんだ身体の力を抜いて、満足な吐息が唇から零れても、私はどこか虚しい気持ちがしていた。
そのとき、部屋の扉がノックされた。
私は慌てて衣服を整える。
「美琴、大丈夫?」
扉の向こう側からそう尋ねてきた声は、洋介くんのものだった。
「あ、うん。えっと、少しだけ待ってて、」
くるりと振り返ると、そこには既に部屋の中に入ってきた洋介くんが立っていた。
「え? どうしっ」
私の言葉は洋介くんの唇に奪われていった。
洋介くんに押し倒された私の身体を、未だ熱の残るベッドが優しく受け止める。
はっとして抵抗しようとするも、彼の力は強く、私は彼になされるがままであった。
洋介くんの舌が私の唇をぺろぺろと舐める。
びっくりして目を開くと、彼のまなざしが鏡夜と少し似ていた。
「え、」
そのことに驚き、少し力が抜けた瞬間するりと舌が私の唇を割って入ってくる。
歯列の裏をなぞられ、舌を絡めさせられ、さっきの自分の熱が舞い戻ってくるかのように私の背筋がぞくりとした。
それが怖かった。
嫌悪する心とは反対に、彼の与える快感に反応する身体が憎かった。
「んっ!」
慌てて強く彼の身体を押し返すと、今度は呆気なく離れる。
荒れた呼吸を整えながらも、私は必死に言葉を紡いだ。
「っはぁ、なん、で」
「……どうしてかって? 美琴が寂しそうだったからに決まってるだろ」
彼はそう言うと、私の両手を一つにまとめあげ、ベッドに押さえつけた。
「洋介くん、離して」
彼は笑顔で覆いかぶさってくる。
その黒い大きな影が恐ろしかった。
かぷりと耳を甘噛みしたあと、彼は言った。
「だから、一人で慰めてたんだろ」
さぁっと私の顔から血の気が無くなっていくのが分かった。
驚愕に目を見開いている私の様子が洋介くんにとっては楽しいようだった。
「何も言えない、か?」
「ちがっ! あれは、」
スカートの中に洋介くんの熱い手が入ってくる。
その熱さのあまり、私の腰はピクリと動く。
「あ、」
彼は私の首筋にキスを落としながら、
「ほら、ここも濡れてんじゃん」
私は羞恥のあまり、顔を背けることしか出来なかった。
「……お願いだから、もうやめて」
震える声でそう告げるも、身体は素直だ。
自分も気持ちよくなろうと快感を受け入れる。
洋介くんの指が中に入ってくると、私は嬌声を咬み殺すことに神経を集中させた。
彼の指は鏡夜の指ととてもよく似ていた。
そして、私の弱い場所を執拗に攻めるところもとてもよく似ていた。
潤む視界を暗闇に落として、私は唇の血が滲むまで咬んでいた。
「っん、」
眉毛だけは悩ましげに顰めて。
洋介くんは器用に私のワンピースを脱がしていき、気がつけば私は生まれたままの姿を彼に見せていた。
ここまでくると、私には早く終わって欲しい気持ちしか残っていなかった。
どうせ、毎晩似たようなことをされているのだ。
その相手が鏡夜だろうが、洋介くんだろうが、どっちでもいい。
そう思い込もうと必死だった。
チクリチクリと何度も胸に痛みが走り、彼にキスマークを付けられているのだと知る。
「美琴はここも綺麗なんだな」
彼は恍惚の表情を浮かべて、私の桃色の二つの突起物を弄った。
がり、とそこに甘い刺激が走り抜け、私は一度達した。
「あっ……」
唇が開くと、彼は私の唇に食らいついた。
「んふっ」
「なぁ、どうして俺じゃ駄目なんだ? 俺の方が美琴を愛しているのに」
悲しそうな顔で私を見下ろす彼は気づいていない。
その瞳の奥に、どうしようもなく歪んだ黒い感情が渦巻いていることに。
その口が、嬉しそうに歪んで弧を描いていることに。
「っ、そうじゃ、ない。あなたは私を組み敷きたいだけ、でしょ。鏡夜に抱かれている私を、自分のものにしたいだけっ」
彼の丸出しの下半身が私の恥部に当たり、ゆらゆらと今にも入りたそうに擦り付けられている。
そのとき、扉から声が聞こえた。
「おい、入るぞ」
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