つぎはぎ校舎

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つぎはぎ校舎

校舎を出た時、不意に今日の宿題を思い出していた。 最後のホームルームが終る頃に配られた一枚のプリント。 あたしはそのプリントを授業中と同じように机の中にしまい、すでに帰る支度が出来ていた鞄を掴んで教室を出てきていた。 その時の光景が思い出された瞬間足を止め、大きく息を吐きだした。 試に鞄の中を確認してみたけれど、やっぱり宿題のプリントは入っていなかった。 「もう、本当に最悪……」 小さな声でつぶやいて空を見上げる。 グラウンドも校舎もオレンジ色に包まれていて、遠くの空に黒いカラスが数羽飛んでいるのが見えた。 今日に限って先生の呼びだしがあり、日ごろの忘れ物の多さを指摘された。 しっかり1時間ほど同じ話を繰り返しされた後ようやく解放されて今に至るのだ。 友人たちは無情にもさっさと帰ってしまうし、今日は学校中の部活も休みということで、残っているのはあたしただ1人。 早く家に帰りたいと思いながらも、忘れ物を指摘された当日に宿題のプリントを置いて帰るわけにはいかなかった。 今度はどんな大目玉を食らうかわからない。 「仕方ない。取って来るか」
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