つぎはぎ校舎

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あたしは自分に言い聞かせるように少し大きな声で言い、きびすを返して校舎へと向かったのだった。 ☆☆☆ ついさきほどまでいた校舎なのに、入った瞬間肌寒さと薄気味の悪さを感じた。 生徒が残っていない校舎に聞こえてくるのは自分の足音だけ。 この坪井高校に入学して、もうすぐ最初の夏がやってくる。 けれど今は6月の梅雨時で、校舎全体がジメジメとしていてカビくささを感じる。 特に、坪井高校の校舎は建て増しが繰り返されていて、所々壁や廊下の色が変わる。 真っ白でシミひとつない新しい校舎に居る時には何も感じないが、ひとたび古い校舎部分に足を踏み入れると雰囲気は一変する。 いくら掃除しても消えない、壁に残る黒いシミ。 茶色くくすんだ廊下。 天井からは雨水が漏れてくることもしばしばあった。 あたしは普段からできるだけ新しい校舎だけを歩くようにしていたが、自分の教室、1年B組へ行くための最短距離はつぎはぎ校舎を歩くことだった。 足早に歩いていたあたしは、パッチワーク状になった校舎で一旦足を止めた。 ここから古い校舎の階段を使って上がるのが一番近い。
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