つぎはぎ校舎

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安堵して教室を出ようとしたとき、急に太陽がかげり、教室内が暗くなった。 「雨が降りそう……」 さっきまでオレンジ色に包まれていた景色が、今では灰色に染まっている。 今日雨が降るなんて聞いてない。 当然傘の用意はしてきていないし、校舎に入ってからの肌寒さも続いている。 雨が降る前に帰らないと本当に風邪を引いてしまうかもしれなかった。 あたしはプリントを乱暴に鞄の中に押し込めながら、教室を出た。 そのまま新しい校舎の階段へ向かおうとして、一旦足が止まった。 普段から新しい校舎を選んで移動しているからついそちらへ足が向いたけれど、少しでも早く帰るなら古い校舎の階段を選んだ方がいい。 振り向いて廊下の奥へ視線を向ける。 薄汚れた廊下の奥は今日蛍光灯が切れたばかりで交換されておらず、真っ暗だ。 でも、そこはついさっきあたしが上がって来た場所だった。 太陽が陰ってしまったから余計に暗く感じるけれど、実はどうってことはないのだ。 あたしはスマホのライトを点灯させて暗い廊下へと向かった。 学校の外ではゴロゴロと雷が聞こえ始めてきている。
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