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その音に急かされるようにあたしは階段を駆け下りた。
じっとりとした空気があたしの体に絡み付き、ともすれば足が止まってしまいそうになる。
それを必死で気づかないふりをして前へ前へと進んでいく。
一気に階段を駆け下りたため何度も転げ落ちそうになって肝を冷やしたが、どうにか1階にたどり着く事ができた。
後は昇降口まで行くだけだ。
ホッと胸をなで下ろした瞬間、外では耳をつんざくような雷の音が響き渡った。
思わず身を屈めて耳を塞いだ。
今のはどこかに落ちた音だった。
そろりと体を起こして窓の外を確認すると、大粒の雨が窓を叩き始めたところだった。
さっきの雷が大雨の合図だったようだ。
「嘘でしょ、もう……」
あたしは肩を落としてため息を吐きだした。
せっかく走ってここまで降りて来たのに、これでは外に出ることができない。
あるいは事務の先生に頼めば傘を貸してくれるかもしれないけれど、そのためには来客用の入り口へ向かわなければならない。
帰る時間はどんどん遅くなっていってしまう。
「お母さんに連絡しようかな……」
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