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妻もいるのだが、妻は経営の全権を握っていて、全く〝ささやき大将〟にはお金などは握らせなかった。
だから、〝ささやき大将〟はお飾りと言っても良かった。
同い年の妻と高校生の息子は、料理のできない〝ささやき大将〟のことを知っているのだが(お客もうすうす感じていた)、口外はしなかった。もしそのことを口にすると、手旗信号の棒の方でこつんと頭を叩かれるからだ。
声の方は言わずもがなだったから、よく口を滑らせて、こつんとやられた。
その〝ささやき大将〟にある事件が起きた。
太り過ぎていた〝ささやき大将〟の膝が悲鳴を上げた。膝に水が溜まってしまったのだ。
手術しようにも手術費が出せない。実際は借金まみれだったからだ。
そのことを〝ささやき大将〟は知らなかった、いや、知らされてなかった。
ささやかな、生活費は入ってくるのだがあぶくのように出ていく出費が存在した。
経営を一手に引き受けていた妻が、料亭の金を全てギャンブルに使っていたのだ。それを今現在までひた隠しに隠していた。
それどころか、ギャンブルで使い果たしているにも関わらず、闇金にまで手を出していて、もう、にっちもさっちもいかない状態になっていたのだ。
それも〝ささやき大将〟は、今の今まで知らされていなかった。
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