ココロ エグル 嘘ツキ

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 半年もすると真美子にも常連客がつき,毎回指名をしてくれる客には特別なサービスをした。店に見つかったら即解雇(クビ)になるような行為を自ら提供し,男達のエスカレートする欲求に応える喜びに溺れていった。  常連客はみな,真美子を抱きながら「愛してる」「俺の女になれよ」と,同じスタンプを押したかのようなセリフを耳元で囁いた。  以前,貢いでいたホストにも同じことを言われていたのを思い出すと,その言葉を素直に受け入れることができなかったが,心の奥底では常にその言葉を求めていた。耳の奥に広がる甘い言葉が心地よく,同時に口の中に血の味が広がった。  この半年ですでに真美子のアパートに招かれた男達も複数いた。店側もいままで真美子を指名していた客が突然来なくなることが続いたことで,真美子が店のルールを破っていることに気がついたが,真美子ほど毎日出勤する女の子はいなかったので見て見ぬふりをした。  毎日のように大勢の男達にサービスを提供し,どんなに金を稼いでも真美子の見た目はさほど変わることなく,化粧も薄ければ派手に着飾ることもなく,いつまで経っても地味なままだった。 「なぁ,お前さぁ,この仕事に随分とハマってるみたいだけど,いつまでも続けられる仕事じゃねぇし,学生ならちゃんと就職を考えといたほうがいいぞ。金を稼げるのなんて,いまだけだからな」  受付に座る敦は真美子が出勤するたびに同じことを言った。真美子にとって敦は苦手な存在で,言葉の端々に自分を馬鹿にしているような雰囲気が混じっているように感じてひどく不快だった。  真美子に話しかけては,目の前で電子煙草を握りしめるようにしてチマチマと吸い込んで,ゆっくりと細い煙を吐き出す姿を見て,高校のときの苦手な同級生を思い出した。 「別にあんたには関係ないじゃん。あんたは私達が汗水垂らして顎外れそうになって稼いだ金で生活してるんだから,いちいち説教するなっての。雇われ店長のくせに馬鹿じゃないの」 「まあな。お前は稼ぎ頭だし,俺もオーナーにバレるまでは何も言わないけど,あんまりやりすぎるなよ……」  二人の間に居心地の悪い空気が流れた。 「別に……どうでもいいじゃん……」 「そうだな……どうでもいいな……」  敦との会話を切り上げ,誰もいない個室へ入ると外で敦が営業の準備をしているのが聞こえた。準備と言っても,店の前の掃除をし,窓ガラスを拭いて,大量の使用済みおしぼりを入れた大きな分厚いビニル袋を店の脇に放り投げるようにして積むだけだった。
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