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……あれ?僕の方が先だ。
今日もいつも通り掃除用具庫に来たけど、藤岡君の姿はまだなかった。最近は藤岡君の方が先にいることが多かったのに。
……それから数分経ったけど、まだ藤岡君は来ない。授業開始まであと5分。今日は休みなのかな……。僕たちは中学時代は連絡を取り合ったりしてたけど、高校に入ってからは一度もしてない。なんとなく、携帯でのやり取りはしない雰囲気がある。だから、連絡は来ないだろうしなぁ……と思っていると、扉が開いた。
「あ、おは……」
藤岡君だと思って、声をかけたけど、そこにいたのは違う人だった。
「……あ、すいません。」
きっと掃除道具を取りに来たんだろう。僕は壁際に寄って邪魔にならないようにした。
「んーと、……高崎君、だね」
「え?」
あ、この人、見たことある。えーと、同じ学年で毎回成績トップの人だ。え、と、なんだっけ、名前……。か行だった気がする……。か……、き、あ、桐生君だ。……桐生君がなんで僕の名前覚えててくれたんだろう。同じクラスになったことないのに。
「え、と、桐生君……」
「へー、名前知っててくれたんだ。」
「成績上位者の紙によく載ってるから……」
「なるほどね。あ、藤岡君からの伝言でね、明日からここに来なくていいって。」
「……え?」
「あと、これ、明日の掃除の時間くらいに読んでね。」
桐生君が渡してきたのは、小さな手紙。
「あ、の」
「もう教室に向かわないと遅刻しちゃうね。いい?明日からはもうここに来なくていいから。」
「え、あ、……分かった……。」
「手紙は明日の掃除の時間ね。」
なんで桐生君が伝言を?とか、この手紙今読んじゃいけないの?とか質問したいことはたくさんあったけど、聞ける雰囲気ではなかった。
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