雑談の時間

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「あ、来てくれたんだね。」  結局、来てしまった。藤岡君には何も伝えなかったけど、バレなきゃ大丈夫かな……。 「え、と、どうしたの?」 「まず、高崎君が僕に聞きたいことあるんじゃないの?」  僕が聞きたいこと?あ、伝言のこと……。 「あの、もうここに来なくていいって、本当に藤岡君からの伝言だったの?」 「違うよ。」 「え……?」  え、どういうこと?嘘ついたってこと? 「高崎君って藤岡君と仲良いの?」 「え、あ、……うん……、たぶん……」 「なんで?」 「え?え、と、同じ中学で、その、仲良かったから……。」 「ふーん。単刀直入に言うね。もう藤岡君と関わるのやめてくれない?」  え。な、なんで、この人達、僕の人間関係に口出してくるの?そんなに仲悪いのかな……。でも、僕なんか勝手に巻き込まれてない? 「あのさ、藤岡君が学校のテスト半分しか解いてないの知ってる?」 「え……?」 「俺ね、ずっと学年1位なんだよね、知ってると思うけど。元々ここ志望校じゃないしね。ただのすべり止め。でも、第一志望の高校のテストの時に風邪ひいちゃってさ、仕方なく、レベルの合ってないこの学校に入学することになったの。」 「そ、うなんだ……」 「だから、絶対入学者代表挨拶は俺だと思ってて。なのに、俺じゃないチャラい金髪ヤンキーが挨拶やっててさ、俺びっくりしたんだよね。」  チャラい金髪ヤンキー……。藤岡君のことだ。確かに代表挨拶してた……。同じ高校なんだーってそこで知ったから、覚えてる。 「でも、俺、その人の雰囲気?というか、溢れ出るカリスマ性っていうのかなー、それで、あー、この人には一生敵わないって思ったんだよね。だから、この高校では常に学年2位かーと思ってたけど、ずっと俺が1位で、しかも、あのヤンキーの名前が成績上位者に載ってないの。」  僕の学校では、テストが帰ってきた後、成績上位者15人の名前が貼りだされる。僕もなんとなく毎回見てるけど、常に1位は桐生君。藤岡君の名前は見たことがない。 「でもね、模試は校内順位毎回2位なの。なんでだと思う?」 「……藤岡君が……1位ってこと……?」 「そうそう。どの教科も彼が1位なんだよね。じゃあ、なんで普段のテスト1位じゃないのって疑問に思うじゃん?模試と校内のテストの大きな違いは成績上位者が貼りだされるかどうか。つまり、彼は頭が良いってバレたくないってこと。」 「……そう、なのかな……」 「ずっとその理由が気になってたんだけどさ、あの彼がここ最近毎日、朝同じ時間に登校して、ある人と喋ってるの。あんなに、普段他人には興味ないですって顔してるのに。」 「……」 「つまりさ、彼は劣等感の強い君と仲良くなるために、頭いいこと隠してるんでしょ。」 「……え?」  え……、何言ってるの……?そんなわけ……あ、藤岡君、僕が完璧な人だからって告白断ったから、今みたいになったって言ってた……。完璧じゃないって思わせるために、今も本当は頭良いの隠してたの?
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