雑談の時間

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「あの、ごめん……、藤岡君の言いつけ、守れなくて……」 「言いつけ?」 「朝の、関わるなって言ってたやつ……」 「あー、いいよ。どうせ、ストーカー野郎がなんか言ってきたんだろ。」 「……ストーカーって……?」 「……なんか、俺のカリスマ性に惚れたとか言って入学してからずっと付きまとってくる。」  そういえば、そんなこと言ってた気がする。 「何話したの?」 「あ……、いや……」 「正直に言って。」 「…………ふ、藤岡君と、関わるなって……」  藤岡君は少しも間黙ってから、大きなため息をついた。 「あいつの言うことは全部無視していいから。」  ……そうはいうけど、桐生君が言ってることも一理ある。僕と藤岡君は釣り合ってない。でも、僕、さっき、咄嗟に藤岡君は僕が隣に居ても嫌がってないって言っちゃった。嫌がってないと思うけど、僕足引っ張ってるのかな……。周りから見て、僕って足手まとい? 「……俺は誰が何と言おうと高崎と一緒に過ごしたいけど。それでも、まだあいつの言葉が引っかかるの?」 「え、あ……」  僕があんまりにも暗い顔をしているから、藤岡君が気を遣ってくれている。 「あ、の、この前、藤岡君、みんなの目を気にしてたって言ってたよね……?」 「うん。」 「な、なんで、気にしなくなったの……?」 「どうでも良くなったから。俺は人の目より高崎から見てどうなのかが気になるから。」  え?僕から見て?……あ、れ……、僕……、もしかして、周りの目ばっかり気にして、藤岡君と向き合えてなかった……?高崎はこんなに真剣に僕と向き合ってくれてるのに、僕はいつも他の人を言い訳に逃げてる。 「……藤岡君は僕と居て、嫌じゃない……?」 「嫌なわけないだろ。俺は高崎とずっと一緒にいたい。」  ……そっか、あとは僕だけの問題なんだ……。藤岡君は僕のために素の藤岡君になろうとしてくれてるし、あとは僕が真剣に……。……あれ、素の藤岡君って……?最近不安そうな顔してる藤岡君だって、さっきの桐生君と話してる藤岡君だって、僕と話してる時の柔らかい雰囲気の藤岡君だって、素じゃないの……?  ……全部ひっくるめて僕が藤岡君のこと好きかどうかなんだ。それが今僕が考えないといけないことだ。 「ふ、藤岡君!!」 「えっ、あ、なに……?」 「あの、週末遊びに行きませんか?」  急に僕が大きい声を出しちゃたからか、藤岡君が少し眉間にしわを寄せて、固まっている。  それに突発的に遊びに誘っちゃった。困ってる、困ってる……。うぅ、申し訳ない……。 「え、あ、いいけど……。」 「本当に……?」 「まぁ……、うん。」 「あ、ありがとう。」  藤岡君は素っ気ない口調だったけど、手を首に当てて、耳を赤くしていた。  ……ちょっと可愛いかも。藤岡君は意外と不器用で照れ屋な人だ。
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