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「……え、あ、高崎……」
「あっ、えっと……、お待たせしました……」
「じゃあ、3人で帰ろっか♡」
「てめーは1人で帰れ。」
結局、藤岡君が桐生君を蹴り飛ばし、僕の手を引いて、教室を出て行き、そのまま2人で帰った。仲良いとはいえ、あんな勢い良く蹴って大丈夫なのかな……?
「……いつから聞いてた?」
「あっ、ごめん、そんな盗み聞きするつもりじゃ……」
「いや、高崎は悪くないよ。あんなとこで堂々話してた俺が悪い。」
「……その、僕は、人がいないとこなら、いつでも……大丈夫、だよ……」
「え?」
確かに付き合う前は何度かキスされたけど、付き合ってもう1ヶ月以上経つのに、一度もキスされてない。手すら繋いでない。藤岡君に頼ってばっかりで申し訳ないけど、さすがに僕からする勇気はないから、もし、藤岡君が恋人らしいことをしたいのなら、藤岡君にリードして欲しい。でも、僕の許可がなくて遠慮してるのなら、嫌だし、藤岡君と付き合う時に、ちゃんと大切なことは伝えるって決めたから、一応心の準備は出来てることを伝えないと。
「……えっ、待って。どこから聞いてた?」
「あ……、その……、手出せないって言ってたとこ……」
「うっわ……、最悪……。……かっこ悪い……。」
藤岡君は手を首に置き、ため息をついている。
「……かっこ悪くてもいいよ。」
「あー……、もー、はぁ……、これ以上好きにさせてどうするの……。」
「え……?」
「……それで、人がいないとこならいいの?」
「あっ……、う、うん……」
藤岡君は僕の手を取り、さっきまで歩いている大通りから一本外れた道へ移った。
「ここならいい?」
「えっ、あ、今……?」
「うん。」
「あー……、い、いよ……」
藤岡君は少し笑って、僕の頬に手を置いた。
「目、瞑って。」
僕は言われた通りに目を瞑った。視覚がなくなったからか、頬に置いていた藤岡君の手が震えているのが分かった。緊張してるのかな……。
……あれ、まだかな……。
ずっと目を瞑ってキスを待っているのは結構恥ずかしい。ゆっくり目を開けると同時に唇が重なった。でも、藤岡君と目が合ってしまった。
「ご、ごめん。……遅かった?」
「あっ、いや、そんな、こと……」
「……はぁ、ごめん。俺、本当に緊張して……」
「……僕も緊張した……」
「ごめん。あー……、こんなに自分が完璧じゃないと思わなかった……。」
「僕は完璧じゃない藤岡君も好きだよ。」
そう、僕はありのままの藤岡君が好き。
藤岡君にそのことを伝えると、少し驚いた顔をした後に嬉しそうに笑っていた。
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