2度目の出会い

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「え、……あの?」  藤岡君に呼び出され、またチワワみたいになっている伊勢崎に先に帰ってもらい、藤岡君の後をついていった。そして、掃除用具が置いてある部屋に押し込まれた。 「ねぇ、いつ話しかけてくれるか楽しみに待ってたんだけど」 「あ……、ご、ごめん」 「俺のことちょこちょこ見てきたから、約束は覚えてたでしょ?」 「う、うん」 「なんで?なんで話しかけなかったの?」 「あ……、その、友達と話してたから……」 「別に、あいつらとの会話なんて大したこと喋ってないんだから、声かけろよ」  え、怒ってる?た、確かに約束破るのは良くなかった。人として良くない……。できない約束はしない方がいい。でも、むちゃぶりしてきたのそっちじゃん……。どうやって、切り抜けよう……。 「あの、本当に……、ご、ごめんなさい……」 「……俺、髪まで染めて、話題作りしてやったよ。話しかけやすかったでしょ?」  いやいや、染めたことによって、いつも以上に友達に囲まれてましたけど?話しかけづらいし、髪染めたの別に俺との話題作りのためじゃないじゃん……。自分が染めたかっただけでしょ……。 「あ、それは……、そうだけど……」 「……似合ってない?」 「え。あ、似合ってます、とても。」 「そう……。でも、だめ。俺、今日ずっと待ってたんだから」 「あ、あの、お金……、今日そんなに持ってないかも……」 「え?いや、今日は出かけないよ、それはまた今度。それにお前は財布出さなくていいよ。」  あれ、カツアゲかと思ってた。僕は財布出さなくていいってどういう意味だ?他の人からは、やっぱお金もらってるのかな。僕は同郷のよしみ的な?あ、それとも、お金持ってなさそうだと思われたのかな、実際そうだけど。あと、出かけるって何?また今度とは?あ、荷物持ちってこと?え、全然理解できない。  あと、なんかじりじりこっちに寄って来てない?背中に壁つきそうなんだけど。あ、いや、今つきましたね。もう逃げ場なくないですか?さすがに横移動したら、逃げんなって殴られそう。 「あ、あの……、この落とし前は、うわっ!?」  藤岡君が僕の腰を、両手で掴んだ。え、こわいこわい。え、どういうこと? 「……細いな、もっと食べた方がいいんじゃない?」 「……え、はは……。」  人間って恐怖の前だと笑うしかないんだなと、他人事のように思った。 「え?」  続いて、腰にあった右手が僕の頬に触れた。あ、やば、殴られる。2,3度頬を撫でるように触られたが、どこを殴るか定め中なのだろう。やっぱ、グーで殴るのかな。今は、頬に合うようにパーで触ってくるけど……。あ、そういえば、人生で殴られるのは初めてだ……。  殴られるという事実と目の前にイケメンヤンキーの顔があるという事実で、無意識に顔が少しずつ下を向いていく。すると、藤岡君がぐいっと顔を上げさせた。あ、殴られる。    目をぎゅっと瞑った。もう覚悟は決めた。できない約束をした僕が悪い。  しかし、いつまで経っても痛みが来ない。それにまだ頬に手が置かれている。  ん?と思い、薄っすら目を開けると、すぐそばに長いまつ毛の目があった。  は?  え?  今唇に何か当たった。 「え?」  目を見開くと、真顔の藤岡君の顔があった。  思考が停止してしまった。  え、今なにしたの?  何も分からず、藤岡君の顔を見ていた。というか、目が合った状態で停止していた。  もう1度藤岡君の顔が近づいてきた。 「え、あ!待って!」  自分の右手で全力で唇を死守する。それでも今の状況を理解できてない。 「……悪い」 「……あ、いえ……」 「んじゃ、明日からはちゃんと話しかけて」  そう言って藤岡君は部屋から出ていった。  一人になって、冷静になり、今の出来事を考えた。それでも分からない。約束破った罰として、キ、キ、キスしたの?向こうはそういうことに慣れてるし、どうせ減るもんじゃないって思ってるんだろう。だから、僕の……ファーストキスを奪ったのか?嫌がらせ?いや、だとしてたら、なんで「悪い」って謝ったんだ?え、陽キャ、というか藤岡君の考えることが分からない。え、キスされた……。え、待って、ファーストキス、男……。え、え、最悪……。なんで……。いや……、男だからノーカン!そう!ノーカンだよね!?うん、なかったことに……、そう、なかったことにしよう……。
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