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「あれ?高崎、おはよ、こんなとこで何してんの?」
「おはよ、あの、昨日藤岡君に話しかけろって釘刺されたから、廊下で待ってるの」
「え、え、どーゆーこと?」
伊勢崎には昨日キスされた話はせず、毎日話かけないと怒られるということ、藤岡君が人気者だから、朝教室に入る前に話しかければ、いいんじゃない?という僕の名案を話した。いつ声をかけようとモヤモヤして過ごすのは嫌だし、藤岡君は朝遅刻ギリギリに教室に着くから、話したとしても数分で終わりになる。我ながら、なかなか良いアイデアだ!
「ほー!賢いなぁー!」
「ふふ、でしょ?」
「昨日も置いて帰ってごめんね?」
「いやいや、あの状況ならそうするしかないよ」
「でも、今回はひと味違う伊勢崎だからね!一緒にここで待つ!」
「え!?いいの!?ありがとー」
正直、あんなことがあった後に2人で話すのは、気まずい。向こうはなんとも思ってないんだろうけど……。
伊勢崎は怖がりだか、情に厚いやつだ。俺を2回も置いていったことを大分悔やんでいるようだ。
「そろそろ来る時間だと思うんだけど……」
「黒髪になったから、前ほど目立たないもんねー。正直あいつの顔ちゃんと見たことないわー。目合わせたら、なんか……狙われそー」
「分かる、分かる」
「てか、なんで黒髪にしたんだろうね?急なイメチェン」
「え……、あー、なんでだろうね……?」
「……うわ、来たんじゃない?」
伊勢崎が向いている方をみると、藤岡君がズボンのポケットに手を突っ込んで、こちらに向かって歩いてきている。良かった、1人だ。よし、いくぞ!
「あ、ふ、藤岡君、おはよー」
「……はよ」
「……」
「……」
あれ、これでオッケーなんかな。もう教室入っていいかな。あと、5分くらいでショートホームルーム始まるし……。
「ねぇ、挨拶じゃなくて、話しかけてっていたんだけど?」
え、「挨拶=話しかける」じゃないんですかね?というか、名案だと思ったけど、教室前の廊下だから、結構目立っている。みんな、こちらをチラチラ見ながら、教室に入っていく。
「え、話かけるって……」
だめだ、もう耐えられない。僕は目立つのが嫌いだ。人の視線がどうしても気になる。徐々に声が小さくなっていく。
「……雑談したいってこと」
「雑談……」
「なんでもいいよ、俺に話すこと考えて。もう学校始まるし、また後で声かけて」
言い終わると教室に入っていってしまった。あれ、また、話しかけないといけないの?昨日みたいにまたモヤモヤしながら、1日過ごさないといけないの?
「あ……、高崎?大丈夫?」
「え、あ、うん、だ、だめだったみたいだね、はは」
「うぅ、俺も去り際に睨まれたぁーー、こわいよ……」
「……とりあえず、僕たちも教室入ろうか……」
最悪だ。まさか失敗するとは。しかも雑談とは?陰キャなめんなよ。1番苦手な分野なのに……。今は共通の話題なんてないし、俺の好きな戦国武将やら戦艦の話なんて聞いてもどうせ「ふーん」で終わりでしょ。陽キャと話すネタってなんだろう。てか、陽キャ同士って何話してるの?あ、この前、大声で女の子の話してたか。あ、恋愛……、そうだ、恋愛の話!あり!男子高校生が盛り上がりそうな話題チョイスじゃない!?よし!とりあえず、話題はオッケー。あとは、タイミング……。
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