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「エルサス、気を付けて! 来るわっ!」
〈ゴーレム〉は容赦なく両腕をぶんぶんと振るい、襲い掛かってくる。岩をも砕く〈水鉄砲〉なら……と背後から狙ってみたものの、プスンと音を立てて〈ゴーレム〉の身体に小さな小さな穴を突き通しただけ。〈ゴーレム〉には微塵も気にする様子が見えない。大きさに差があり過ぎて、細い針で刺した程度にしか感じないのだろう。
ドエムが強大な力を持つとは聞いていたものの、ここまで力の差があるとは思わなかった。私とエルサスの魔法じゃ、ドエムが生み出した〈ゴーレム〉を前に手も足も出ない。
どうしよう。何か打開策を。まだ使っていない魔法は。それとも何か、利用できるものは……。
本来ならば何よりも先にドエムと話し合いたいところだったけれど、彼には完全に耳を貸すつもりはないらしい。
「くそっ! とにかく立ってられなくしてやる!」
エルサスが遮二無二〈かまいたち〉を連発する。単発では効果が見られなかったエルサスの攻撃も、何度も何度も同じ場所を狙う事で、少しずつ変化がみられるようになってきた。
〈ゴーレム〉の右足の膝のあたりに、亀裂が入り始めたのだ。
「私もっ!」
援護射撃とばかりに、私も〈ゴーレム〉の右膝を狙って〈水鉄砲〉を連射する。たかが針でも、何本も刺されれば平気でいられるはずがない。
「これでどうだっ!」
渾身の力を込めた〈かまいたち〉が直撃した途端、ひと際大きな亀裂が〈ゴーレム〉の右足に走るのが見えた。ピキピキッと音を立てて亀裂はどんどん広がり、右膝から崩れ落ちるようにしてゴーレムの巨体が傾く。
「エルサス、やった!」
歓喜の声をあげたのも束の間――私はゴーレムが自分目掛けて倒れて来る事に気付いた。
やばい、今から走って逃げたんじゃ間に合わない! 防ぐとすれば――〈液化〉しか……。
「駄目だシャール!」
エルサスの声にはっと我に返る。
そうだ。仮に〈液化〉で潰されるのを避けたとしても、そのまま倒れた〈ゴーレム〉に居座られたら、魔力が尽きて元の身体を取り戻した瞬間にぺちゃんこだ。どっちにしても逃げられない。
「くそぉっ!」
エルサスが突如、ドンッ! と何かに弾かれたように真っすぐ私に向かって飛んできた。
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