事件発生

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「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーー!」  叫び声を聞きつけて、男性陣が一斉に部屋を飛び出して来た。 「どうした?」  真っ先に駆け付けたのは、蜂蜜色のミドルヘアに甘すぎる程整った美しいマスクを持つ第一王子アレン。  彼は部屋の中を入って来るなり、驚きに目を見開いた。 「オリヴィエ! どうしてこんな事に!」  自らの婚約者にすぐさま駆け寄り上半身を抱き上げるも、オリヴィエの身体はだらりと人形のように力を失っており、既に事切れているのは明らかだった。 「何事だ!」 「朝からなんだってんだ、一体!」  続いて入って来たのは、彫りの深い顔立ちに短く刈り上げられた黒髪、長身で筋骨隆々としたギリシャ彫刻のような肉体美を持つ騎士団長の息子ドエム。燃えるような赤い髪を伸ばしっぱなしにした三白眼の細面が、男爵家の子息フロイだ。 「何の騒ぎ?」  悪戯っ子のような笑みを浮かべて最後にやってきたのは、侯爵令息のエルサス。肩まであるやや癖っ毛の白銀の髪と、中性的な顔立ちも相まって、ぱっと見は女の子のように見える。  小さな頃から幼馴染みとして育ってきた彼らが、部屋の中の惨状を見た瞬間に表情を強張らせたのは言うまでもない。 「オリヴィエ……嘘だろ。なんだってこんな事に……」  フロイが切れ長の瞳をさらに細めた。その横から歩み出たエルサスが、怪訝そうにオリヴィエの胸に突き立てられた黒いナイフに近づく。 「これは……闇の匂いがする」  全員が息を飲み、エルサスに注目した。彼はこくりと頷きを返す。 「このナイフでオリヴィエを刺したのは、闇魔法の使い手に違いない」 「なんだって?」  私達は顔を見合わせた。 「ほら、胸に刺さっているのに血が一滴も流れていない。これは肉体ではなく相手の魔力を傷つけるものだと思うよ。可哀想に、オリヴィエはきっと痛みを感じる事もなく、自分に何が起きたかもわからないまま死んじゃったに違いない」  静かに疑問を挟んだのは、ドエムだ。 「……しかし、今この島にいるのはここにいる六人だけのはずではなかったか。そんなおかしな者が潜入する事はできまい」 「ああ。試練の期間中は何人たりとも踏み入る事はできない。島の結界は王城の神殿に繋がっているし、侵入しようとする者がいればすぐさま城から兵が駆け付けるはずだ」  第一王子アレンが頷き返す。 「おいまさか……この中にやった奴がいるって言うんじゃねえだろうな」  フロイの言葉に、私達ははっとなった。
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