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集まったのは私の他に五人。
第一王子アレン。
公爵令嬢オリヴィエ。
騎士団長の息子ドエム
男爵子息フレイ。
侯爵子息エルサス。
彼らと出会う事も、彼ら一人一人がどんな人間なのかも、こうして会う前から私はよく知っていた。
彼らにとっては信じられないかもしれないが、私はこれから起こるべき全ての出来事を誰よりも熟知しているのだ。
何度も何度も攻略してきたゲームの中の物語なのだから。
それで言うと、これから私達は結界によって閉じられたこの島で一週間の魔法合宿へと挑む事になる。無事にやり遂げた暁には、魔法王国エリュテイアの中にも数人しか存在しないという〈宮廷魔術師〉の名誉を授与されるのだ。
魔法合宿は古来より繰り返し行われてきた地獄のような日々だというのだが……実際にはこれから始まる一週間、私達は魔法合宿とは名ばかりの海水浴やバーベキューといった楽しいイベントを消化しながら、素敵な恋物語を繰り広げていく。
最終的には〈宮廷魔術師〉の称号を得るとともに、順調に愛を育み、この四人の誰か一人と結ばれるハッピーエンドを目指すのがゲームの目的なのだが、唯一悪役キャラとして用意されているのが公爵令嬢オリヴィエ。
第一王子アレンの婚約者である彼女は様々な嫌がらせや妨害工作を私に対して仕掛けて来る。しかし、最終的にはその罪を問われ、婚約も破棄され、破滅してしまうというわかりやすく言うなれば悪役令嬢的な役どころだ。
私の相手役である四人の男の子の数だけストーリーは分岐するが、どれを進んだとしてもオリヴィエは破滅を避けられない。
だから――逆に言えば、物語が始まる最序盤において彼女が殺されるのはあり得ない。
どんなストーリーラインを進んだとしても、彼女が破滅を宣告されるのは物語の最後。序盤で唯一の悪役キャラを退場させるような展開はなかったはずなのだ。どうしてこんな事になったのかという点については、逆に私の方がみんなに聞きたい。
一体誰が、何のためにこんな事をしでかしたのかと。
ただし、最終的にはオリヴィエが破滅する運命だったという事実は留意すべき点である。
今後私と誰が結ばれるかはさておき、最終的には彼らは〈宮廷魔術師〉としてそれぞれが立派な国の要人となるはずなのだ。変なところで試練そのものを中断してしまえば、〈宮廷魔術師〉の称号だって得られなくなるかもしれない。それもまた、彼らにとっては大きな痛手だろう。
とりあえずゲームの流れとしては楽しい夏合宿が本筋なのだから、突発的なオリヴィエの死はさておき、どうにかして元のストーリーラインに戻れるよう、みんなで協力して考え直した方がいいんじゃないか。
悪役はゲームの要素として必要なだけであって、実際に私と恋物語を歩む上ではなくても支障はないはずなのだから。
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