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「不思議だろう?」
「不思議すぎます」
「この花は見た人みんなを魅了するんだ。向かいのお医者さんも隣の銀行の支店長も再選した市長も、みんなうちのお客さんだよ」
「そうそうたるお客さんで……」
「金持ちは凄いね、あんなにたくさん買ってどうするんだろうな」
「はあ……」
「しかし今回はマイナスドライバーかあ」
「いつもドライバーじゃないんですか?」
「毎回違うね。育てた人にとってそのとき必要なものになるんだよ」
「おじさんはマイナスドライバーが欲しかったんですね」
「いや、欲しいものになるわけじゃないよ。必要なものになるんだ」
「……どう違うんですか?」
「育てた人にとって必要なものを花が判断するんだ。偶然、必要なものと欲しいものが同じになることはあるかもしれないけど、今のところ俺は経験してないねえ」
おじさんはドライバーの花にまた視線を落とす。
「それにしてもマイナスドライバーとはね。マイナスのネジなんて見かけないけどなあ」
「何かの役に立つと良いですね」
「しかし不思議で面白いだろう?」
「面白いです。私が育てたら何になるんだろう」
「一つ育ててみるかい?」
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