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「よかった、みんな来てるね」
そこへユニスが姿を見せた。あまり身体を締めつけないゆったりした装いで、皆を見渡して告げる。
「母上ももうすぐ来られるそうだから、少しだけ待ってて——あ、母上」
ユニスの声がふいに弾む。
その視線の先に、一人の女性がいた。
ユニスと同じ銀の髪は品よく結い上げられ、その瞳には優しげな光を湛えている。
かつて国一番の美姫と謳われたほどに端麗な容姿のその女性こそは、現国王の第一王妃にしてユニスの母である、ミレーネだった。
「ご機嫌よう、皆さん。突然ここにしてごめんなさいね。朝起きたら風があんまり気持ち良くて……それに、ユニスも今日は普通にお食事できそうだったから、なら外でと思ってしまったの」
少し眉を顰め、まず急な変更を詫びる。相変わらずの気遣いに、臣下を代表してウルグが慌てて打ち消した。
「陛下、滅相もないこと。偶には外というのもようございます。さあ、どうぞ、お席に」
「ありがとう、ウルグ」
庭に咲く花たちも霞むような柔らかな笑みを零して、ミレーネは優美な所作で席に着く。
国王の第一王妃ミレーネ、その息子にして第一王子のユニス、この街を治める将軍ウルグとその孫娘ティティア、そして王子の侍者であるイレーセル。これが食事のときのいつもの顔触れであった。
が、考えてみれば奇妙な話だった。
常ならば王都ユールヘルンで王とともに在るはずの王妃と王子が、なぜこのような国境近くの街にいるのか——。
それは、侍者ならば武装しているはずのイレーセルが、短剣すら帯びず聖衣をまとっていることにも関係していた。
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