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真広兄ちゃんについて
ミモザの言う真広兄ちゃんが、ミモザの実の兄でないならなんになるのか?
答えは簡単だった。
親同士が仲が良く、昔からよく遊んでくれていた二つ年上のお兄さんらしい。いわゆる幼馴染みというやつだろう。
大学に入学すると同時に家を出て、マンションで一人暮らしをはじめた真広兄ちゃんが、クリスマスの夜、特別用事がないことをミモザは聞きつけた。
それで、二人だけのクリスマスパーティーを提案して、実行したらしい。
「で、そこで酒を飲まされたと」
「違う。自分で飲んだんだ」
大学生と言えばハメを外して酒をうぇいうぇい飲んじゃうイメージがあったが、真広兄ちゃんという奴はとても真面目で模範的な大学生らしい。
そんな真広兄ちゃんが、高校生のミモザとのクリスマスパーティーにわざわざアルコールを持ち込むはずがなかった。
健全に正しくクリスマスパーティーを楽しむつもりでいたのだ。
それなのに自らアルコールを持ち込んだミモザは、あろうことかさんざん制止しようとする真広兄ちゃんを説き伏せて、一緒に酒を飲んだらしい。
「なんて説き伏せたの?」
「言わない」
ミモザは絶対口を割らなかった。
チクチク言葉を量産するみたいに、言葉巧みに騙くらかして真広兄ちゃんをはめたのだろう。
飲んだ酒はジュースみたいに甘くておいしかったのだと言う。
でも、初めて口にした酒がミモザの体内を巡るのは早かった。
身体が熱くなって、頭がぼんやりとして、夢心地の状態になったミモザは、意を決して真広兄ちゃんに言った。
「俺に言ったみたいに、好き、抱いてって?」
「……多分。実は、あんまり覚えてない。告白して、抱いてもらうつもりでいたから、お酒の力を借りてそう伝えるつもりだった。でも、あまりにも頭がぐらぐらし過ぎて、記憶が曖昧なんだ」
「じゃあ、実は覚えてないだけで抱かれてたりして。ミモザの穴、ゆるかったし」
俺が言うとミモザはキッと眉を吊り上げた。
「それは自分で準備してたから!」
「へぇ、自分で指入れて準備してきたってこと? 健気だな」
「あ、う、うるさい」
「じゃあ、その準備段階で尻だけでイけるようになったの?」
「うるさいうるさい。黙れカス」
話が脱線したあげく、ミモザが立ち去ろうとしたので俺はどうどうと引き留めた。
「ごめんごめん。でも、ミモザ、俺が最初に指入れた時も、半分寝てるみたいな状態で覚えてないんだよね? だったら真広兄ちゃんにも抱かれてた可能性は捨てきれなくない?」
ミモザは自信なさそうに瞳を揺らした。
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