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「覚えてないから、なんとも言えない」
「せっかくの初体験だったのにね」
目に見えて、ミモザは落ち込む。
あんまりにもしょんぼりしてるから俺は言った。
「その後真広兄ちゃんから連絡はないの?」
「あったけど」
「なんて?」
「クリスマスの夜はちゃんと家まで帰れたかって、心配してた。真広兄ちゃんの家で酔っ払って記憶をなくしたあとしばらくして、気づけば水をたくさん飲まされた気がする。それから、真広兄ちゃんが駅まで送ってくれて、電車に乗った。それで、最寄り駅で降りて、駐輪場に自転車を取りに行ったんだけど、急に立てなくなっちゃって……」
「そこに俺が通りかかったと。よかったね」
「よくない。全然よくない。お前なんかにお持ち帰りされるなんて最悪だ。悪夢だ。夢なら早く覚めてほしい」
「よかったでしょうが。外、結構寒かったし、あんな酔っ払った状態で警察に補導なんかされたら、学校に通報いって今頃大変よ」
ミモザはむうと唇を尖らせた。
「確かに。親に心配かけるところだった。そこは、感謝する、べきなんだと思うけど」
「ねっ」
「でもお前が俺をレイプした事実は変わらないからな」
「ああ、うん。それはごめん。だから今度は同意の上で、しない?」
「絶対しねぇよ!」
男らしく言い切ると、今度こそミモザは俺の前から去っていった。
そういうわけで、真広兄ちゃんという奴の正体は知れたわけだが、その実、二人の関係がどこまで進展したのかは分からない。
真広兄ちゃんはミモザを抱いたのか? 抱かなかったのか?
ミモザの恋が成就するのか、しないのか。
真相を知る必要があった。
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