真広兄ちゃんについて

2/2
前へ
/79ページ
次へ
「覚えてないから、なんとも言えない」 「せっかくの初体験だったのにね」  目に見えて、ミモザは落ち込む。  あんまりにもしょんぼりしてるから俺は言った。 「その後真広兄ちゃんから連絡はないの?」 「あったけど」 「なんて?」 「クリスマスの夜はちゃんと家まで帰れたかって、心配してた。真広兄ちゃんの家で酔っ払って記憶をなくしたあとしばらくして、気づけば水をたくさん飲まされた気がする。それから、真広兄ちゃんが駅まで送ってくれて、電車に乗った。それで、最寄り駅で降りて、駐輪場に自転車を取りに行ったんだけど、急に立てなくなっちゃって……」 「そこに俺が通りかかったと。よかったね」 「よくない。全然よくない。お前なんかにお持ち帰りされるなんて最悪だ。悪夢だ。夢なら早く覚めてほしい」 「よかったでしょうが。外、結構寒かったし、あんな酔っ払った状態で警察に補導なんかされたら、学校に通報いって今頃大変よ」  ミモザはむうと唇を尖らせた。 「確かに。親に心配かけるところだった。そこは、感謝する、べきなんだと思うけど」 「ねっ」 「でもお前が俺をレイプした事実は変わらないからな」 「ああ、うん。それはごめん。だから今度は同意の上で、しない?」 「絶対しねぇよ!」  男らしく言い切ると、今度こそミモザは俺の前から去っていった。  そういうわけで、真広兄ちゃんという奴の正体は知れたわけだが、その実、二人の関係がどこまで進展したのかは分からない。  真広兄ちゃんはミモザを抱いたのか? 抱かなかったのか?  ミモザの恋が成就するのか、しないのか。  真相を知る必要があった。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加