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電話はわずか二十三分後に鳴った。ワンコールで受け取れば、
「役割担当事務局、神田です。井上響子さんでいらっしゃいますか?」
「はい、そうです! えっと、早速なんですけど、私の役割は……」
心臓が狂ったように鳴っている。
血液の流れが手に取るようにわかる。神田という男は、ええと、と前置きしてから、
「大変申し訳ありませんでした。こちらの手違いで井上さんへ送るはずの葉書きだけがまだ私共の手元にありまして。今から速達で送っても確実に明日になってしまうので、失礼ではありますがこの電話にて明日からの井上さんの役割をお伝えさせていただきます」
息をのむ。
「井上さんの役割は」
時が止まる。
「『天然、及び、鈍感な感性の人間』となります」
死ぬまで続く地獄が私の肉体を一息で飲み込んでいった。
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