18人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
何も進展しない疑問符だらけのリポートの中で、「科学的」ではないけれど、「なんとなく」わかったことがひとつだけあった。
けれども、それはザルタナを余計に混乱させた。結果をどう考察すればいいかわからず、ザルタナはAIが出したその結果を、「未処理」のフォルダに放り込んだままにしている。
あの空域を通過した船は他にもあった。なのになぜアシュリンは、二人の前だけに姿を見せたのか。
機長の男。
昨日、アシュリンの髪の毛からDNAコードを読み取って、峡谷の住人のデータベースと照合した。すると、ミトコンドリアDNAに共通のコード部分を持つ人間が数人見つかった。
機長の祖母と母親。
機長は男だから、彼自身はそのコードを持っていないけれど、彼女らの孫であり息子である彼の血も、アシュリンとおそらくつながっている。
アシュリンは、その血に呼応して現れたのかもしれない。「なんとなく」。
ただし。
そのコードの配列から、その血は「近くはない」。百世代以上は経た「遥かに遠い」血のつながりだ、とAIは言う。
だとしたら、アシュリンは、遠い過去から現れたのか。遠い未来から現れたのか。
そして最初の質問に戻る。
じゃあ、アシュリンは何者。
最初のコメントを投稿しよう!