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 何も進展しない疑問符だらけのリポートの中で、「科学的」ではないけれど、「なんとなく」わかったことがひとつだけあった。  けれども、それはザルタナを余計に混乱させた。結果をどう考察すればいいかわからず、ザルタナはAIが出したその結果を、「未処理」のフォルダに放り込んだままにしている。  あの空域を通過した船は他にもあった。なのになぜアシュリンは、二人の前だけに姿を見せたのか。  機長の男。  昨日、アシュリンの髪の毛からDNAコードを読み取って、峡谷の住人のデータベースと照合した。すると、ミトコンドリアDNAに共通のコード部分を持つ人間が数人見つかった。  機長の祖母と母親。  機長は男だから、彼自身はそのコードを持っていないけれど、彼女らの孫であり息子である彼の血も、アシュリンとおそらくつながっている。  アシュリンは、その血に呼応して現れたのかもしれない。「なんとなく」。  ただし。  そのコードの配列から、その血は「近くはない」。百世代以上は経た「遥かに遠い」血のつながりだ、とAIは言う。  だとしたら、アシュリンは、遠い過去から現れたのか。遠い未来から現れたのか。  そして最初の質問に戻る。  じゃあ、アシュリンは何者。
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