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今から3週間ほど前。
728便は、予定通り順調に、タイタンから火星行きの航路をゆっくりと進んでいた。
太陽フレアやCMEの予報もなく、オートパイロットで特にすることもなく、ノディグはタブレットの本を読み、チェノアは仮眠室に引っ込んでうとうとと眠っていた。
突然、その静寂を切り裂いて、3億キロの彼方から太陽がはじけたような賑やかな声が響いた。
「おーい、ノディグ、チェノア! 起きてるか!」
「よう、ハワカン。俺は起きてるけど、チェノアは寝てる」
ノディグの声は、たった今船を出発したばかりだ。ハワカンに届くには15分以上かかる。ハワカンもそれが分かっているから、一方通行でまくしたてる。
「すんげえ話、するぞ」
「どうせ出所不明の話だろ? 聞きたくない。今、本読んでんだ」
「お前のことだから、ゴシップまがいの話なら聞きたくないとか言ってんだろ。いいから聞けよ!」
「ちょうど推理小説の犯人がわかるページに差しかかってんだよ。それを途中にしてもいいくらいすんげえ話だろうな」
チェノアが起きてきた。「ハワカン、おはよう。あなたに起こされました」
「ステラジーノ社のクルーがさ、変な体験したんだってよ。でも、報告書、すぐ取り下げたって」
「へえ」
「それがさ……」
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