1 はじまりはハワカンのすんげえ話

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 タイタンと火星を結ぶ輸送航路。  木星と火星が衝に近い時は距離が短くなり比較的楽だが、合となると、倍以上時間がかかる。いくら輸送船の性能が年々向上しているとはいえ、最長で往復4か月は長旅だ。  しかも、航路の途中には航行禁止空域があって、そこをぐるりと迂回するぶん、余計に時間を食う。  ユリシーズ社の運ぶ積み荷は、火星の生活になくてはならないものだから、合を理由に、仕事はさぼれない。  そこで、できるだけ速いルートをとるために、航行禁止空域ぎりぎりをかすめて飛ぶことになる。禁止空域内を飛ぶと、事と次第によれば法外な罰金と長い禁固刑が待っているから、間違っても中には入らない。  その航行禁止空域ぎりぎりを通過した別の貨物船のクルーが、ひどく奇妙な体験をした、というのがハワカンの話だった。
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