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「あのっ……、やめっ」
「うるせぇなぁ!黙って来いよ!」
高校に入学して、まだ3か月。なのに、こんな目に遭ってるんだから、不幸としかいいようがない。
僕は勉強だってそれなりに頑張ったつもりだったのに、高校入試に失敗し、ヤンキーしかいないような高校に入学することになった。この時点で十分不幸だ。でも、それ以上の不幸が待っていた。
「今、機嫌悪いんだよ!お前がどうにかしろ!」
「でっ、でも……」
「いいから、さっさと部屋の中に入れ!」
この高校はめちゃくちゃ治安が悪い。でも、前よりは良くなったらしい。その理由は、圧倒的に強いリーダー格のヤンキーが誕生したかららしい。だから、悪目立ちする人はいなくなったけど、その人に好かれなかったら、もう退学するしか道はない。
となると、不幸体質の僕は好かれなかったというのが話のオチになるはずだ。
「あ、あの……、ぼく……」
「あ゙ぁ?」
ヤンキーの圧に負け、僕は生徒会室の重い扉を開いた。
その途端、ヤンキーが僕の背中を押し、無理矢理生徒会室の中に押し込んできた。扉が勢いよく閉まり、もう逃げ場はなかった。
「……おい、誰が勝手に入っていいって言ったんだよ。」
「あっ……、す、すいま、せん……」
立派な椅子に座って、窓を見ていた人物は僕の声を聞いて、椅子を反転させ、こちらを冷ややかな目で見た。でも、僕と目が合った瞬間に威圧的な雰囲気は一気に消えた。
「あっ、うさちゃん!」
「……うわっ!?」
椅子から飛び降りて、勢い良く僕に抱きついてきたこの人物こそ、さっき言っていた圧倒的に強いリーダー格のヤンキーこと愛宕先輩だ。
「今日も俺に会いに来てくれたの?」
「……は、はい……」
「えー、嬉しいー♡」
そう、僕は好かれなかったのではなく、好かれてしまったのだ。
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