423人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
先輩との接近
「ここに来るのは動名詞になるってから、答えはA。次もメガフェップスだから、」
「こいつ、昨日の可愛い子に連絡先交換しようって言ったら、携帯持ってないからって断られてんの!」
「ははっ、やっば、この時代に携帯持ってないは嘘すぎ~。」
「うるせーなぁ!たまたま昨日持ってなかっただけかもしれねーだろ!」
「それで、今回の場合だと、知覚動詞だから、」
クラスのほとんどがヤンキーだから、授業は成り立っていない。みんな好き勝手なことをして、騒いだり、ゲームしたり、爆睡したりしている。でも、先生も諦めているのか注意はせず、淡々と小さい声で授業をしている。
ちゃんと勉強をしたい僕にとって、この高校は合ってなさすぎる。
「宇佐美、お前さ、愛宕先輩に好かれてるから、俺達とは仲良くしたくないわけ?」
「え……?」
急に隣の席でギャーギャー騒いでいた金髪のヤンキーが話しかけてきた。
「確かに。宇佐美って絶対に会話に入って来ないよな。」
「はっ、陰キャだからじゃね?」
「まず、愛宕先輩に好かれてるの謎すぎんだけど。」
「それな。意味分かんねー。」
僕だって意味が分からない。それに、会話に入らないじゃなくて、入れないだけ。だって、何話せばいいか分かんないし、愛宕先輩のせいでみんなからの視線が痛いし……。
「てか、また無視?」
「あ、いや……、」
「ははっ、陰キャって感じだわ。」
「……その、「ちょっと、ちょっと~。うさちゃん、いじめないでくれる?」
急に僕のことを後ろから抱きしめ、会話に入ってきたのは多分愛宕先輩だ。いや、絶対愛宕先輩。顔は見えないものの、聴覚や嗅覚から愛宕先輩だということを語っている。
「先輩……、」
「迎えに来ちゃった~。」
迎えに来たもなにも今は授業中だ。
もちろん、真面目に受けてない人が多いから、授業中に廊下を歩いてる人も少なくないけど、他学年のクラスに来るなんて……。
「んで、なんでお前らはうさちゃんいじめてるわけ?」
「あ……、いや……、す、すいません…………。」
さっきまで僕のことを馬鹿にしていたようなヤンキー達も愛宕先輩の前になると、途端に静かになる。愛宕先輩は喧嘩が強いだけでなく、ここの生徒会長もやっている。それに、本当か分からないけど、この学校の理事長の孫らしい。だから、武力だけじゃなくて、権力という点からも誰も逆らえないみたいだ。
「うさちゃん、可哀想に。こんなに可愛いのにね?」
「……いえ………、」
「そーいえば、うさちゃんっていつも誰とお昼ご飯食べてるの?」
「え……?」
「こんなやつらと食べてないでしょ?1人?」
「……はい………。」
「じゃあ、これからは俺と一緒に食べよーね。生徒会室で待ってるから。」
「え……。」
お昼も一緒……?朝も放課後もヤンキー達のせいで、先輩のもとへ連れていかれてるのに……?
「んじゃ、行こっか。」
「えっ、あのっ、」
まだ授業中なのに、先輩は僕の鞄と僕の腕を掴み、教室から出て、生徒会室へと向かっていった。先生も見て見ぬフリをするし、ヤンキー達が僕を守ってくれるわけもない。僕の味方なんてどこにもいなかった。
最初のコメントを投稿しよう!