先輩との接近

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先輩との接近

「ここに来るのは動名詞になるってから、答えはA。次もメガフェップスだから、」 「こいつ、昨日の可愛い子に連絡先交換しようって言ったら、携帯持ってないからって断られてんの!」 「ははっ、やっば、この時代に携帯持ってないは嘘すぎ~。」 「うるせーなぁ!たまたま昨日持ってなかっただけかもしれねーだろ!」 「それで、今回の場合だと、知覚動詞だから、」  クラスのほとんどがヤンキーだから、授業は成り立っていない。みんな好き勝手なことをして、騒いだり、ゲームしたり、爆睡したりしている。でも、先生も諦めているのか注意はせず、淡々と小さい声で授業をしている。  ちゃんと勉強をしたい僕にとって、この高校は合ってなさすぎる。 「宇佐美、お前さ、愛宕先輩に好かれてるから、俺達とは仲良くしたくないわけ?」 「え……?」  急に隣の席でギャーギャー騒いでいた金髪のヤンキーが話しかけてきた。 「確かに。宇佐美って絶対に会話に入って来ないよな。」 「はっ、陰キャだからじゃね?」 「まず、愛宕先輩に好かれてるの謎すぎんだけど。」 「それな。意味分かんねー。」  僕だって意味が分からない。それに、会話に入らないじゃなくて、入れないだけ。だって、何話せばいいか分かんないし、愛宕先輩のせいでみんなからの視線が痛いし……。 「てか、また無視?」 「あ、いや……、」 「ははっ、陰キャって感じだわ。」 「……その、「ちょっと、ちょっと~。うさちゃん、いじめないでくれる?」  急に僕のことを後ろから抱きしめ、会話に入ってきたのは多分愛宕先輩だ。いや、絶対愛宕先輩。顔は見えないものの、聴覚や嗅覚から愛宕先輩だということを語っている。 「先輩……、」 「迎えに来ちゃった~。」  迎えに来たもなにも今は授業中だ。  もちろん、真面目に受けてない人が多いから、授業中に廊下を歩いてる人も少なくないけど、他学年のクラスに来るなんて……。 「んで、なんでお前らはうさちゃんいじめてるわけ?」 「あ……、いや……、す、すいません…………。」  さっきまで僕のことを馬鹿にしていたようなヤンキー達も愛宕先輩の前になると、途端に静かになる。愛宕先輩は喧嘩が強いだけでなく、ここの生徒会長もやっている。それに、本当か分からないけど、この学校の理事長の孫らしい。だから、武力だけじゃなくて、権力という点からも誰も逆らえないみたいだ。 「うさちゃん、可哀想に。こんなに可愛いのにね?」 「……いえ………、」 「そーいえば、うさちゃんっていつも誰とお昼ご飯食べてるの?」 「え……?」 「こんなやつらと食べてないでしょ?1人?」 「……はい………。」 「じゃあ、これからは俺と一緒に食べよーね。生徒会室で待ってるから。」 「え……。」  お昼も一緒……?朝も放課後もヤンキー達のせいで、先輩のもとへ連れていかれてるのに……? 「んじゃ、行こっか。」 「えっ、あのっ、」  まだ授業中なのに、先輩は僕の鞄と僕の腕を掴み、教室から出て、生徒会室へと向かっていった。先生も見て見ぬフリをするし、ヤンキー達が僕を守ってくれるわけもない。僕の味方なんてどこにもいなかった。
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