夏休み

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「いらっしゃーい!」  夏休み3日目。  先輩が『いつ来るの?』と何回も連絡をしてくるし、しまいには何度も電話をかけられ、これ以上はぐらかすのが難しくなってしまった。だから、3日目にしてあっけなく僕は先輩の家に行くこととなった。 「来てくれて嬉しいよ~♡」  先輩はいつも見慣れた制服ではなく、コンビニの前にいるヤンキーのような服装で僕を待ち構えていた。だから、いつも以上に雰囲気が怖いし、2人っきりで先輩の家にいるなんて本当に精神がすり減りそうだ。 「じゃあ、始めよっか!」  教科書を広げると、先輩はちゃんと僕の勉強を見てくれた。思っていた以上に真面目だったから、少しだけ先輩の好感度が上がりそうだった。 「んー、代入するのはそっちじゃなくて、こっちね。んで、ここの計算ミスってる。」 「あ……、すいません………。」 「気にしなくていいよ♡2人で頑張ろうね♡」  先輩が僕のことをからかっているつもりでも、勉強を教えてくれるのは正直助かった。できれば、接点を持ちたくないけど、それはきっと無理だ。だから、勉強を教えてくれるのは不幸中の幸いだけど、今のところ僕にとって滅茶苦茶悪い状況じゃない。  少しだけキリキリと痛んでいた胃が落ち着いたと感じていると、急に先輩が僕の腰に手をまわしてきた。しかも、服を捲って、直で触ってる。驚きすぎて、声も出なかった。痴漢される女子の気持ちが痛いほど分かってしまった。 「え……、あの……、…………この問題……、」 「ん?あぁ、それは頂点の座標を先に出すやつでしょ?ペン貸して。」  抵抗するよりも注意を逸らした方がいいと思って、適当に難しそうな問題について聞こうとしたら、先輩の手はペンを握るために離れていった。  ……良かった。でも、もうこんなとこ来たくない……。  その後も僕をからかっているのか腰や背中を直接触ってきたけど、それ以上のことはなかった。休憩と称して、先輩の膝の上に乗せられて、抱きつかれたりはしたものの、これは1ヶ月以上し続けてるから、少し慣れてきた。それでも、正直気持ち悪いものは気持ち悪いけど。
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