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顔を上げた彼の瞳は、まるで捨てられる仔犬のようだった。精悍な男からは想像もつかないような表情につい頬が緩みそうになる。
「ああ。お前一人くらい、俺が養ってやるよ」
スペンサーは口角を上げ、腰に回された腕に手を重ねた。
ランディの顔から笑みがこぼれる。
「頼もしいなあ」
「だからお前は自分の信じる道を進めばいい。必ず返り咲けるよ、ランディ」
見上げたランディは頬を淡く染めて微笑み、スペンサーも笑い返す。
窓の外では桜のつぼみが綻び始めていた。春はもうすぐそこだ。
≪完≫
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