3人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前には、校舎の堅苦しさを取っ払ったかのように、高級ホテルにも優るとも劣らない清潔感と高級感が溢れる建物があった。
「うわっ……す、すごいですね、ここ。予想以上でした」
「だな」
「まずは部屋に行って。その後向こうにある校舎に来てちょうだい。それじゃあね」
乗馬で馬を鞭打ちするようにハイヒールの踵をカツンと打ち付けると、先生は校舎がある方へ歩いていった。インストラクターみたいな姿勢の良さが後ろ姿でも分かる。
置き去りにされた俺は、ひとまず下館と共にその城門のような扉を押し開く。
主に赤のカーペットが敷かれる床に踏み入ると、最初に豪華絢爛な装飾品できらびやかに飾られたロビーが目に入った。リゾートホテルを彷彿とさせて、俺はあまり落ち着かなくて嫌気が差した。
「何か眩しいですね」
「あらあらぁ、新入生?」
シャンデリアをぼーっと眺めていると、不意にほんわかとした雰囲気の女性の声によって我に帰らされた。
何だかネバネバした声色は苛立ちを覚える。……なんて感じ方するのは俺だけだろうしとても失礼なので割愛。
「あ、はい……一年 江路って言います」
「下館 あり沙です」
「二人とも遅刻の子達ね。じゃあ君達は四十八号室ね。付いてきて」
何の事やら、と振り向き様に説明された俺達は首を傾げた。大人の雰囲気漂う彼女は、エプロン姿のまま階段を登っていく。
状況が掴めない今は、素直に付いていくしかない。重いバッグを持ってその優しげな背を追った。
「こっちよ」
どうやら目的地は四階らしい。さすがに走ってからまた階段となると息切れしてしまい、下館と揃って肩で呼吸しながら進む。
部屋と思われる扉に書かれた数字が、四十五、四十六と、長い廊下を進むにつれて増していく。
「ここがあなた達の部屋。四十八号室。四階の八番目の部屋だからね」
廊下の最奥部、突き当たりの一番目立った扉が、俺達の部屋らしい。
……ん? 俺『達』の部屋?
「これ、鍵ね」
最初のコメントを投稿しよう!