一章 みんな違ってみんな良い

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 どっしりと重厚な外装を背景に、校門の時と同じように腕組みして待つ女性がいた。先程俺達を叱責したあの先生だ。 「ようやく来たわね。入学式は体育館でやってるから今すぐ行くわよ。少ししか参加できないけど」  下駄箱で靴を履き替える。俺達は持参した上履きを、先生はハイヒールから校内用の靴を履き、そのまま廊下を進む。  ……そもそも登校してきて最初に入寮、次に入学式、その後教室っていう流れが特殊すぎると思うのだが……この学校に常識は通用しなさそうだ。  明らかに苛ついている先生の後ろ姿を少し追っていると、綺麗に清掃された校舎内にはそぐわないような重苦しい扉が現れた。 「ほら入って。あなた達が今日最後の遅刻者なんだから静かにね」  最後のって事は他にも遅刻者はいたのだろうか? そんな五十歩百歩な事を考えても仕方ない訳で、そそくさと体育館の中へ。  そこで俺は、広がった光景にただただ愕然とした。  揃えられた椅子に座る男女。少々緊張した面持ちなのは入学式だからだろうが、その顔面が恐ろしい事になっている。  ――美少年か、美少女しかいない。いわゆる不細工と呼べる輩がどこを見回しても誰一人として存在していない。  確かに招致の手紙の募集要項欄に書いてあった。『美男美女である事』と。俺はそれに該当するから選ばれたのだと。  何かの間違いか冗談かと思ったのだが、どうやらそれは嘘偽りの無い真実だったらしい。  女子の列なんて端からべっぴんさん、べっぴん、一人も飛ばさずべっぴんさんという感じ。漫才できないぞこれ。 「怖ぇよ逆に……」  空いていた椅子に座る。もちろん隣には花もとい華の下館。花弁みたいに綺麗な髪色だ。 「校長先生ありがとうございました。次は生徒会長の言葉です」  どうやら失礼な事に校長の挨拶が終わった所で入ってきたらしい。どうせ大した話ではないだろうからラッキーだったが。
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